従来の便秘薬は大きく分けると2種類です。
- 便の水分量を増やして排便を促す
酸化マグネシウム - 大腸を刺激して排便を促す(大腸刺激性下剤)
センノシド(プルゼニド)、アローゼン、ラキソベロン
「日常の便秘であれば、酸化マグネシウムを用量調整して使い、がんこな便秘にはセンノシド(プルゼニド)などの大腸刺激性下剤を頓服する」
というのが一般的な便秘薬の使い方です。
2012年にアミティーザと呼ばれる新しいタイプ(3種類目)の便秘薬が発売され、頑固な便秘に対処する選択肢が増えました。
従来の便秘薬と比較しながら、アミティーザの便秘改善効果と副作用、そして気になる薬価(薬の値段)を解説します。
たかが便秘、されど便秘
便秘は日常的によくみられる症状ですが、便秘だけで病院を受診する方は少数です。
便秘市販薬が充実しているため、ほとんどの方が市販で対応しているのが現状です。
『酸化マグネシウムE便秘薬(市販)の飲み方 飲み合わせNGは牛乳だけ?』
しかし、便秘は慢性化するとQOL(生活の質)を低下させ、さまざまは症状を引き起こします。
- 腹痛
- 腹の張り(腹部膨満感)
- 吐き気
- おなら(ガス)
- 肌荒れ
- 痔の悪化
- 頭痛
- 胃痛など
便秘の原因はさまざまですが、原因のひとつが便の水分量が低下です。
便の水分量の低下が便秘の原因であるならば、単純に便に水分を与えればいいのです。
便の水分量が増加すれば便はやわらかくなり、スムーズに便が降りてきて肛門を痛める(痔を悪化させる)ことなく排便できるというわけです。
大腸刺激性便秘薬の習慣性
大腸を直接刺激するタイプの便秘薬には習慣性があります。
- ラキソベロン(ピコスルファートナトリウム)
- アジャストA・アローゼン(センナ)
- プルゼニド・センノサイド(センノシド)
- テレミンソフト坐剤(ビサコジル)
習慣性とは、大腸を刺激し続けると大腸が刺激に慣れ便秘薬の切れ味が悪くなることです。
センノシド(プルゼニド)が効かなくなると、さらにセンノシド(プルゼニド)を増量せざるをえなくなり腹痛の副作用リスクが増えます。
そして、副作用リスクを抱えたままセンノシド(プルゼニド)の量は増え続け、便秘薬スパイラルにはまります。
そうならないための便秘薬の使い方はこうです。
通常の便秘には整腸剤(ビオフェルミン、ラックビーなど)や便軟化作用のある酸化マグネシウムを主に使い、頑固な便秘に限定してセンノシド(プルゼニド)を使います。
そして、センノシド(プルゼニド)で起こりやすい習慣性を減らした便秘薬がアミティーザです。
新便秘薬アミティーザの作用機序 (酸化マグネシウムとの違い)
アミティーザはオレンジ色の軟カプセルで、主成分はルビプロストンです。
アミティーザ(ルビプロストン)は、小腸にあるクロライドイオンチャネルに働きかけて腸内への水分分泌を増加させ、便が降りてくるのを助ける作用があります。
【クロライドチャネルアクチベーター】
さらに、クロライドイオンチャネル活性化は、腸粘膜のバリア機能を改善することも確認されています。
まとめると、アミティーザは便に水分を与えて便をやわらかくして、自然な排便を起こす便秘薬です。
便の水分量を増やして便を軟化させる便秘薬に酸化マグネシウムがありますが、作用点が違います。
酸化マグネシウムは大腸で作用し、アミティーザは小腸で作用する点です。
アミティーザの飲み方
アミティーザは1回1カプセルを1日2回(朝夕食後)服用します。
妊婦は服用できません。
酸化マグネシウムやセンノシド(プルゼニド)、アローゼン、ラキソベロンなどの従来の便秘薬と同様に、アミティーザも服用してみないとことには実際の効果がわかりません。
アミティーザの効果が強く出る(効きすぎる)と、下痢する場合があります。
(詳細後述「アミティーザの副作用(吐き気、下痢)」)
『酸化マグネシウムで宿便を撃退!何錠までなら飲んでもOK?』
アミティーザの効果
便秘重症度の比較試験では、アミティーザを服用して1週間後から効果が実感できることがわかります。
アミティーザ添付文書を参考に作成
4:極めて重度の便秘(全く出ない)
↓↑
1:軽度の便秘(便秘症状がわずか)
1週間の合計排便回数は、2回以下から5回以上に増えています。
アミティーザ添付文書を参考に作成
48週間の長期にわたって服用するアミティーザの臨床試験(長期投与試験)では、ほぼ毎日排便がある(週に5~6回)ように便秘をコントロールできています。
アミティーザ添付文書を参考に作成
この結果からアミティーザはセンノシド(プルゼニド)、アローゼン、ラキソベロンの便秘薬であるような習慣性が少なく、長期服用しても効果は持続すると考えられます。
『ラキソベロン(ピコスルファート)の効果時間と副作用(下痢・腹痛)』
アミティーザの効果発現時間
アミティーザは効果発現時間の個人差が大きいです。
アミティーザを初めて飲んで効果が出るまでの時間(排便までにかかる時間)は23.5±29.1時間です。
(臨床試験では58.1%の方が24時間以内に排便)
つまり、アミティーザは、センノシド(プルゼニド)、アローゼン、ラキソベロンのように、寝る前に飲んだら朝にトイレに行きたくなるわけではありません。
アミティーザは翌日の日中や睡眠中に便意を催す可能性があります。(←かなり厄介)
『アローゼン顆粒の効果と副作用 センノシド(プルゼニド)との違いは?』
アミティーザの副作用(吐き気、下痢)
アミティーザは副作用が発生しやすい便秘薬(全体で62%)です。特に飲み始めに起こる吐き気が原因で続けられなくなる方が多いです。
(本当にオエッと気持ち悪いらしい)
胃腸系症状の副作用はアミティーザを服用した1~2日目に起こることが多く、約90%が2週間以内です。
アミティーザの主な副作用と頻度
副作用 | 副作用頻度(%) |
---|---|
下痢 | 30 |
吐き気(悪心) | 23 |
(臨床試験より)
市販後調査期間中に収集された副作用も363例593件あり、そのほとんどが吐き気(132件)下痢(114件)嘔吐(47件)腹痛(21件)などの胃腸系症状です。
アミティーザの便秘効果が効きすぎると下痢します。ですので、下痢は1日2回を1回にするなどの対応で何とかなる場合が多いです。
一方、吐き気や嘔吐の副作用は食後すぐに飲むと副作用が抑えられる傾向があります。アミティーザは食後服用がおすすめです。
『ビオスリーは下痢便秘にジワーッと効く!すぐに効かないけど飲み続けよう』
アミティーザの薬価は高い
アミティーザは従来の便秘薬と比較すると薬価がかなり高いです。
ジェネリックがあるといいのですが、アミティーザは2012年に発売された新しい便秘薬であるためジェネリックもありません。
便秘薬 | 薬価(円) |
---|---|
アミティーザ | 161.1 |
プルゼニド | 5.6 |
ラキソベロン内用液 | 24.2 |
酸化マグネシウム330mg 「ヨシダ」 |
5.6 |
2017年の新薬「リンゼス」も便秘改善効果が高いです。
『リンゼスとアミティーザ 5つの違い なるほど!新型便秘薬はこう違うのか』
まとめ
- 2012年にアミティーザと呼ばれる新しいタイプ(3種類目)の便秘薬が発売。
- アミティーザ(ルビプロストン)は、小腸に働きかけて腸管内への水分分泌を増加させ、便が降りてくるのを助ける作用がある。
- 便の水分量を増やして便を軟化させる便秘薬に酸化マグネシウムがあるが、作用点が違う。
(酸化マグネシウムは大腸で作用し、アミティーザは小腸で作用する) - アミティーザの3つの良い効果(特徴)
1.便秘改善に対する満足度の向上
2.定期的な排便の促進
3.長期間にわたる便秘改善 - アミティーザは効果発現時間の個人差が大きいため、必ずしも服用翌朝にトイレに行きたくなるわけではない。
- アミティーザは下痢、吐き気などの胃腸系副作用頻度が高い。
- 消化器系症状の副作用はアミティーザを服用した1~2日目に起こることが多い。
- アミティーザは、従来の便秘薬と比較すると薬価がかなり高いのがネック。
(薬価161.1円)
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