爪水虫に効果のある飲み薬は次の2種類です。
- ラミシール錠(テルビナフィン)
- イトリゾール(イトラコナゾール)
ラミシール錠は肝臓に負担をかけ、イトリゾールは併用薬に気を使い、爪水虫の治療が思うように進まないときもあります。
優劣を付けにくいのも爪水虫の飲み薬(爪白癬の飲み薬)の特徴です。
※爪水虫の正式名称は爪白癬(つめはくせん)です。
※ラミシールには、錠剤、クリーム、スプレーがあります。
本記事ではラミシール錠をラミシールと記載します。
爪水虫の飲み薬 ラミシールの特徴 (テルビナフィン)
ラミシールの主成分はテルビナフィンで、通常の水虫から爪水虫まで幅広く効果のある飲み薬です。
飲み方は簡単です。普通に毎日1日1回連続して服用します。
(イトリゾールは特殊な飲み方をします。後述)
ラミシールを服用して約2週間後から爪の中にテルビナフィンが浸透し始め、12週まで上昇します。
その後、飲み薬を飲んでいる間は、爪に一定のテルビナフィン濃度を保ちます。
出典:ラミシールインタビューフォーム(一部改変)
ラミシール服用6カ月後を目安に、爪水虫への効果判定します。
爪の伸びる速度は一定ではないため、爪水虫の治療期間は個人差があります。
ラミシールの飲み薬を1年以上飲む例もあります。
ラミシールの効果
ラミシールを1日1回服用して約6カ月後に効果を判定する試験の菌陰性化率(効果)は、83.3%でした。
(後期第Ⅱ相試験抜粋)
ラミシールの副作用とその自覚症状
ラミシールの副作用
ラミシールの市販後調査によると、何らかの副作用が報告されたのは11.91%でした。
ラミシールの主な副作用
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
胃部不快感、悪心 | 2.18% |
腹痛 | 0.76% |
肝機能異常などの肝胆道系障害 | 1.53% |
肝臓などの臨床検査値異常等 | 4.58% |
ラミシールの重大な副作用 (肝機能障害)
重篤な肝障害(肝不全、肝炎、胆汁うっ滞、黄疸等)及び汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されている。
本剤を使用する場合には、投与前に肝機能検査及び血液検査を行い、本剤の投与中は随伴症状に注意し、定期的に肝機能検査及び血液検査を行うなど観察を十分に行うことラミシール錠添付文「警告」より
飲み薬のラミシールは肝機能(肝臓機能)に大きな障害を与えることがあり、死亡例も報告されています。
(ラミシールクリーム・スプレーは該当なし)
重篤な肝臓障害は、ラミシールの飲み薬を飲み始めてから2カ月以内に起こる場合が多いため、
- 飲み始める前
- 飲み始めて2カ月間は月に1回
- その後は定期的に1回
肝機能検査(血液検査)をする必要があります。
ラミシールの副作用の自覚症状
重大な副作用 | 主な自覚症状 |
---|---|
重篤な肝障害 | 発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振、だるい、白目や皮膚が黄色くなる |
汎血球減少 (はんけっきゅうげんしょう) |
めまい、息切れ、動悸、耳鳴り、歯ぐきの出血・鼻血・あおあざができる (出血しやすい) |
無顆粒球症 (むかりゅうきゅうしょう) |
発熱、喉の痛み |
血小板減少 | 歯ぐきの出血・鼻血・あおあざができる (出血しやすい) |
爪水虫の飲み薬 イトリゾールの特徴 (イトラコナゾール)
イトリゾールの主成分はイトラコナゾールで、通常の水虫から爪水虫まで、幅広く効果のある飲み薬です。
イトリゾールにはカプセルと液剤がありますが、爪水虫に効果があるのはカプセルのみです。
イトリゾール内服液は通常の水虫や口腔カンジダなどで利用されています。
イトリゾールの飲み方(パルス療法)
イトリゾールの飲み薬を普通の水虫に使う場合の飲み方は、毎日服用です。
イトリゾールを爪水虫に使うときは、パルス療法という特殊な飲み方をします。
イトリゾールのパルス療法とは
イトリゾール4カプセル(200mg)を、1日2回食直後に1週間飲みます。
(1シート8カプセルが1日分)
その後、3週間イトリゾールを飲まない期間をもうけます。【1サイクル】
これを3サイクル繰り返します。
イトリゾールの効果
イトリゾールパルス療法の有効率
爪白癬に対するイトリゾールのパルス療法の有効率(効果)は84.6%です。
(二重盲検比較試験)
イトリゾールやラミシールの飲み薬を飲んでも、一度変色や変形した爪は元のきれいな爪に戻ることはなく、新しい爪の生え変わりできれいになります。
(爪が伸びないことには効果が現れない)
爪の場所にもよりますが、爪水虫の治療期間は1年から1年半が目安です。
出典:爪白癬患者さんのための「爪白癬治療の心得」
イトリゾールの爪への浸透力
パルス療法終了後も、爪にイトリゾールの主成分イトラコナゾールが長期間浸透して効果を発揮し続けます。
0週、4週、8週にイトリゾールを1週間ずつ服用して、イトリゾールの足の爪中濃度を測定したところ、
爪中イトリゾール濃度は緩やかに上昇し、パルス療法を始めてから48週後もMIC90を越える爪濃度を維持しています。
イトリゾールのパルス療法臨床試験より抜粋
MIC90とは、90%の微生物の成育を阻止した濃度を指します。
再パルス療法(2回目)
パルス療法終了2~3カ月後に、爪の伸びをみてイトリゾールの効果を判定します。
もし、きれいな爪の伸びないようであれば、再度パルス療法が行われる場合もあります。
イトリゾールの副作用
185名の爪水虫の方にパルス療法(200~400mg/日)を行ったときの臨床試験の結果では、副作用は13.51%の頻度で発生しました。
イトリゾールの主な副作用は、肝機能を示す数値の増加です。
主な副作用 | 副作用の頻度 |
---|---|
ALT増加 | 4.86% |
AST、γ-GTP増加 | 4.32% |
ALP、LDH増加 | 1.62% |
イトリゾールの禁忌(併用不可)
イトリゾールは併用禁忌(併用不可)と言われる、飲み合わせ×の薬が多くあります。
これらの薬とイトリゾールを併用した場合、次の表にある薬の効果が強く現れ危険です。
薬剤名 | 主成分 | 主な目的 |
---|---|---|
カルブロック | アゼルニジピン | 高血圧 |
レザルタス配合錠 | アゼルニジピン、他 | |
バイミカード | ニソルジピン | |
セララ | エプレレノン | |
ラジレス | アリスキレン | |
ハルシオン | トリアゾラム | 不眠症 |
ベルソムラ | スボレキサント | |
クリアミン配合錠 | エルゴタミン | 偏頭痛(片頭痛) |
ジヒデルゴット | ジヒドロエルゴタミン | |
エルゴメトリン マレイン酸塩注 |
エルゴメトリン | |
メテルギン | メチルエルゴメトリン | |
レビトラ | バルデナフィル | 勃起障害 |
リポバス | シンバスタチン | 高脂血症 |
硫酸キニジン | キニジン | 不整脈 |
ベプリコール | ベプリジル | |
プラザキサ | ダビガトラン | 塞栓症の発症抑制 |
イグザレルト | リバーロキサバン | |
ロナセン | ブロナンセリン | 統合失調症 |
オーラップ | ピモジド | |
スンベプラ | アスナプレビル | C型肝炎 |
バニヘップ | バニプレビル | |
レバチオ | シルデナフィル | 肺動脈性肺高血圧症 |
アドシルカ | タダラフィル | |
アデムパス | リオシグアト | 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 |
ブリリンタ | チカグレロル | 急性冠症候群 陳旧性心筋梗塞 |
爪水虫の飲み薬 ラミシール VS イトリゾール
効果の違い
ラミシールとイトリゾールの爪水虫への効果の優越を示したデータは見つかりません。
副作用の違い
ラミシールとイトリゾール、どちらも肝臓への負担が比較的大きい薬です。
特にラミシールは肝機能に大きな障害を与える場合があり、さらに死亡例も報告されていることから、服用中は肝機能検査(血液検査)が義務づけられています。
副作用により気を付けなければならない飲み薬は、ラミシールです。
服用期間6カ月薬の値段(薬価合計)の違い
爪水虫飲み薬 | 薬価 | 1日服用量 | 28日薬代 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|
ラミシール | 184.2 | 1 | ¥5,158 | ¥1,550 |
イトリゾール | 354.2 | 8 | ¥19,835 | ¥5,950 |
服用期間約6カ月間(イトリゾールはパルス療法のため3カ月)の薬局での薬の値段(3割負担)
- ラミシール:9300円
- イトリゾール:17850円
薬価ベースでリーズナブルな飲み薬は、ラミシールです。
爪水虫の治療は飲み薬から塗り薬へ
爪水虫は爪の奥の方に潜んでいるため、飲み薬(ラミシール、イトリゾール)しか効果がありませんでした。
ラミシールは肝臓に負担をかけ、イトリゾールは併用薬に気を使うため、爪水虫の治療は思うように進まないこともあります。
そこで開発された薬が、爪水虫塗り薬クレナフィンとルコナックです。
クレナフィンは、2014年9月に発売された爪水虫への効果が認められた日本初の塗り薬です。
2番目に発売されたルコナックはクレナフィンより安く、治療コストを抑えられる塗り薬です。
まとめ
– | ラミシール | イトリゾール |
---|---|---|
飲み方 | 毎日服用 | パルス療法 |
肝機能検査 | 必須 | 推奨 |
併用禁忌 | なし | 多数 |
効果 | 優越は不明 | |
副作用 | 肝臓機能の低下に注意 | |
長所 | 併用薬に気を使いにくい | 原則28日毎の通院 |
短所 | 通院回数、血液検査が多い | 併用薬に非常に気を使う |
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