認知症薬は4種類あり、その中の3種類は脳内のアセチルコリンの濃度を増やして認知症の進行を抑えます。
- アリセプト(ドネペジル)
- レミニール(ガランタミン)
- イクセロンパッチとリバスタッチ
(リバスチグミン)
アリセプトとレミニールは飲み薬ですが、イクセロンパッチとリバスタッチは貼り薬です。
イクセロンパッチとリバスタッチは、湿布のようにペタっと貼って使います。
アリセプトやレミニールは胃腸系副作用が現れやすいため、副作用の軽減を目的としてイクセロンパッチとリバスタッチが開発されました。
しかし、貼り薬には独特の「かぶれ」の副作用があり、それをいかに軽減するかがイクセロンパッチとリバスタッチを使う上のポイントでもあります。
イクセロンパッチとリバスタッチの効果と副作用、かぶれないための使い方を解説します。
(最後にレミニールも少し解説)
認知症貼り薬 イクセロンパッチとリバスタッチ
イクセロンパッチとリバスタッチは商品名と製造メーカーが違うだけで、リバスチグミンを主成分とする同じ認知症貼り薬です。
飲み薬は飲んだのかどうかわからなくなる場合がありますが、貼り薬は使っているかどうかを見て確認できます。
認知症貼り薬は、家族や介護者が薬の管理をしやすい剤形です。
イクセロンパッチとリバスタッチの作用機序
認知症では、アセチルコリンと呼ばれる脳内の神経と神経で連絡を取り合う物質(神経伝達物質)の濃度が低下しています。
イクセロンパッチとリバスタッチは、そのアセチルコリンを分解する酵素をブロックします。
(アセチルコリンエステラーゼ阻害作用)
そうすることで、脳内のアセチルコリンを増やし、神経の連絡網が途切れないようにして認知機能の低下を抑制します。
イクセロンパッチとリバスタッチの使い方
イクセロンパッチとリバスタッチは認知症貼り薬
イクセロンパッチとリバスタッチは、唯一「貼り薬」という剤形を採用している認知症薬です。
イクセロンパッチとリバスタッチは、傷などのない上半身(主に背、腕、胸)に貼り、24時間毎に貼り替えます。
かぶれの副作用軽減のため、少し貼る場所をずらして貼りかえるのがポイントです。
背中でローテーションする例
出典:イクセロンパッチの使い方(改変)
イクセロンパッチとリバスタッチは、ホクナリンテープと使い方が似ています。
『ホクナリンテープは風邪の咳止めシールではない!元々は喘息の貼り薬だ』
イクセロンパッチとリバスタッチは、認知症薬を拒否している場合でも家族や介護者が目立たないところにペタッと貼っておくことができます。
また、イクセロンパッチとリバスタッチには、貼った日などを書きこむスペースもあります。
貼った日と時間を書くと貼り薬の管理がしやすいです。
イクセロンパッチとリバスタッチの漸増
イクセロンパッチとリバスタッチは、1日1回4.5mgからスタートして、
4週ごとに4.5mgずつ増量し、治療に効果を現す用量18mgまで増量します。
【3ステップ漸増法】
ただ、この方法では18mgまでに12週間もかかってしまうため、
状態に応じて1日1回9mgからスタートして、4週後に18mgに増量するという漸増法(1ステップ漸増法)もあります。
貼り薬の用量をステップアップするのは、胃腸系副作用を軽減するためです。
ただし、認知症貼り薬の効果を早く期待したい場合は、1ステップ漸増法の方がいいかもしれません。
日本人のアルツハイマー型認知症の方を対象にした、イクセロンパッチとリバスタッチの1ステップ漸増法と3ステップ漸増法の比較試験では、
副作用などの理由で薬が中止になった割合の差はわずかだったからです。
増量方法 | 中止率 |
---|---|
1ステップ漸増法 | 15.0% |
3ステップ漸増法 | 18.5% |
イクセロンパッチとリバスタッチの副作用
胃腸系副作用
他の認知症薬と比較すると、イクセロンパッチとリバスタッチは吐き気や食欲低下などの胃腸系副作用は少ないです。
胃腸系副作用の頻度
イクセロンパッチ リバスタッチ |
レミニール | |
---|---|---|
嘔吐 | 7.8% | 12.6% |
悪心 | 7.6% | 14.9% |
食欲減退 | 5.2% | 8.3% |
(臨床試験結果より)
貼り薬のかぶれの副作用
イクセロンパッチやリバスタッチを使う方は、高齢者がほとんどです。
高齢者の皮膚は、健常者に比べるとバリア機能が落ちているため、イクセロンパッチとリバスタッチは貼り薬特有の副作用(皮膚の赤み、かゆみ、かぶれ)が起こる頻度がやや高いです。
副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
紅斑(赤み) | 37.7% |
そう痒感(かゆみ) | 36.6% |
接触性皮膚炎(かぶれ) | 25.4% |
イクセロンパッチとリバスタッチのかぶれ対策 (副作用対策)
貼り薬の位置のローテーション
貼り薬の貼る場所を毎回変更することで、パッチかぶれは軽減します。
参照
「イクセロンパッチとリバスタッチの使い方」
入浴後にはがす
イクセロンパッチとリバスタッチをはがすときは、パッチの粘着力を弱くしてからはがします。(入浴後)
はがすときの皮膚の刺激が軽減し、パッチかぶれを防止できます。
保湿剤の使用
イクセロンパッチとリバスタッチを貼ってから、貼った場所以外のところに保湿剤ヒルドイド(ヘパリン類似物質)や皮膚保護剤プロペト(白色ワセリン)でスキンケアしておくことで、パッチかぶれは軽減します。
次に貼る予定のところは、特に念入りにスキンケアします。
ただし、貼る直前に軟膏・クリームを塗ると、イクセロンパッチとリバスタッチの粘着力が下がり、はがれる原因になるため避けます。
ステロイド軟膏の使用
かぶれがひどいときは、貼り薬にこだわらず他の認知症薬に変更されるケースが多いですが、
それでも貼り薬で対応する必要があるならば、ステロイド軟膏を使用します。
認知症内服液レミニール
レミニールはガランタミンを主成分する認知症薬です。
レミニールには、錠剤と内服液があります。
レミニール内服液は水やジュースなどにも簡単に混ざり、固形物が飲み込みにくい方に重宝されます。
レミニールの作用機序
レミニールも、イクセロンパッチとリバスタッチと同様にアセチルコリンを分解する酵素をブロックして、認知症の進行を抑制します。
さらに、アセチルコリン受容体の働きを高める作用もあります。
レミニールは脳内のアセチルコリンの濃度を高めて、神経の連絡網の低下を抑えるとともに、連絡をキャッチする機能も高めます。
レミニールの飲み方使い方
イクセロンパッチとリバスタッチは1日1回ですが、レミニールは効果の持続時間が短いため1日2回服用する必要があります。
レミニールは1日8mg(1回4mgを1日2回)からスタートして、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量します。
また、レミニールは症状に応じて1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量できますが、1日16mgを4週間以上服用した後に増量します。
レミニールも、アリセプト(ドネペジル)と同様に食事の影響を受けませんが、消化器症状の副作用を軽減するため、食後に飲むことが多いです。
まとめ
- 認知症飲み薬:アリセプト、レミニール、メマリー
- 認知症貼り薬:イクセロンパッチとリバスタッチ
- アリセプトやレミニールは胃腸系副作用が現れやすいため、副作用の軽減を目的としてイクセロンパッチとリバスタッチが開発された
- 貼り薬には独特の「かぶれ」の副作用がある
- 飲み薬は飲んだのかどうかわからなくなる場合があるが、貼り薬は貼っているかどうかを見て確認できるメリットがある
- イクセロンパッチとリバスタッチは上半身貼り、24時間ごとに新旧貼り替える
- 高齢者は湿布かぶれやパッチかぶれの副作用の頻度が高い
- そのためかぶれ対策は必須
- レミニール内服液は、水やジュースなどにも簡単に混ざる
本記事の元タイトルは
「アリセプト(ドネペジル)・レミニール・イクセロンとリバスタッチの効果、用法、副作用の違い」です。
加筆して分割しました。
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