ドグマチール(スルピリド)で母乳(乳汁)が出る、太る副作用が起こる理由

体重計に乗る女性 胃薬
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ドグマチールで注意しなければならない副作用に高プロラクチン血症があります。

高プロラクチン血症とは、乳汁を分泌するホルモンであるプロラクチンが増える副作用です。

 

産科では、

ドグマチールの副作用(高プロラクチン血症)を逆手に取って、母乳(乳汁)を出しやすくする薬として使用される場合もありますが、

ドグマチールは男性も乳汁が出る場合があるため、高プロラクチン血症は注意すべき副作用です。

 

また、ドグマチールは太るとも聞きます。

ドグマチールはもともとは胃薬で、視床下部交感神経中枢に作用して、吐き気、食欲不振、腹部膨満感、腹部不快感、腹痛、胸焼け・・・など胃症状全般を改善します。

胃の動きが改善するため、食欲が上がってしまうからだと考えられます。

男であればちょっと太るくらい…と思いますが、女性にとって体重が増えることは深刻な問題かもしれません。

ドグマチール(スルピリド)の効果

ドグマチール錠50mg、100mg、200mg
左からドグマチール錠50mg、100mg、200mg

 

ドグマチールの主成分はスルピリドです。

ドグマチール(スルピリド)は、何の効果を期待するかで用法用量の違いがあります。

1日用量 最大用量
胃薬
(胃・十二指腸潰瘍)
150mg
(50mg×3回)
うつ病・うつ状態 150mg~300mg 600mg
統合失調症 300mg~600mg 1200mg

 

ドグマチール(スルピリド)は少用量(150mg以下)であれば、吐き気、食欲不振、腹部膨満感、腹部不快感、腹痛、胸焼け・・・など消化器症状を改善する胃薬です。

中用量(150mg~)からはうつ・統合失調症などの精神系症状を改善する薬です。

ドグマチール(スルピリド)の副作用

副作用 精神科 消化器
 体重増加  0.69%  0.02%
 乳汁分泌  0.88% 0.3%
 悪心・嘔吐  0.45%  0.15%
 便秘  0.54% 1.12%
 胃部・腹部不快感 0.13% 0.77%
 振戦 1.28% 0.07%
 月経異常 1.22% 0.33%
 睡眠障害 2.83% 0.02%
 脱力・倦怠感
(だるさ)
0.72% 0.26%
口渇 0.78% 0.59%
  • 精神科全体の副作用頻度:12.57%
  • 消化器関係の副作用頻度:3.7%
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ドグマチール(スルピリド)には抗うつ効果がありますが、現在は単独でうつ症状に使用されるケースは少ないです。

効果のある確かな生粋の抗うつ剤(SSRI、SNRI、NaSSa)が他にあるからです。

しかし、抗うつ剤でよく見られる副作用に、吐き気、だるさ、眠気、口渇、便秘、そして体重増加(太る)などがあり、

継続するにあたって副作用が問題となることがよくあります。

 

特に太りやすいリフレックス(NaSSa)の副作用の例

  • 傾眠(うとうと):50.0%
  • 口渇(喉の渇き):20.6%
  • 便秘:12.7%
  • 体重増加:5%以上

 

ドグマチール(スルピリド)はもともとは胃薬のため、吐き気や便秘などの消化器系の副作用は少ないです。

しかし、太る副作用もわずかなからあり、しばしば問題になります。

ドグマチール(スルピリド)で太る理由

抗うつ剤には多かれ少なかれ「太る」という副作用があり、

抗うつ剤で太る主な理由は、抗ヒスタミン作用(ヒスタミンをブロックする作用)が原因と考えられています。

花粉症薬(抗アレルギー薬)は太る?

抗ヒスタミン作用といえば、花粉症で使われる抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬)を真っ先に思い浮かべるかもしれません。

実際、花粉症や皮膚のかゆみで使われるザイザルアレロックの添付文書の副作用の項目には、体重増加(太る)は頻度不明で記載されています。

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ただ、実際のところ抗アレルギー薬で太ることはほとんどありません。

なぜなら、抗アレルギー薬の抗ヒスタミン作用は脳に影響を与えにくいようにデザインされているからです。

抗アレルギー薬が太らない理由
※矢印の太さが効果の強さ

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抗うつ剤で太る理由

抗うつ剤の抗うつ作用はモノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン)が関係しています。

モノアミンとは
ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど、神経伝達物質の総称

  • ドーパミンは、快楽・喜びの感情に関係
  • ノルアドレナリンは、意欲・やる気の感情に関係
  • セロトニンは、不安の感情に関係

 

抗アレルギー薬と違い、抗うつ剤は抗ヒスタミン作用が脳内で発揮するようにデザインされています。

ヒスタミンには食欲を抑える働きがあります。

ヒスタミン増加:満腹感(体重減少:やせる)
ヒスタミン減少:空腹感(体重増加:太る)

 

ヒスタミンがブロックされると食欲を抑えにくくなります。

先述のリフレックスは抗ヒスタミン作用が強いため、太る副作用頻度が高いです。

ナウゼリン・プリンペランは太らない

ドグマチール(スルピリド)には抗ヒスタミン作用はほとんどありません。

ドグマチール(スルピリド)とその他の抗うつ剤では、太る原因が違います。

胃薬ドグマチール(スルピリド)は胃腸の動きを改善する結果、食欲を上げすぎてしまうことがあると考えられます。

 

しかし、ひとつの疑問が生まれます。

ドグマチール(スルピリド)はドパミンD2受容体をブロックして効果を示します。

なぜドグマチール(スルピリド)は胃薬、うつに効果があるのか?
ドグマチール(スルピリド)には、2つの作用(交感神経を抑制する作用とドパミンD2受容体をブロックする作用)と3つの顔が(胃薬、抗うつ剤、統合失調症薬)があります。

 

ドパミンD2受容体をブロックする胃薬にはプリンペランやナウゼリンがありますが、これらの胃薬は太るという副作用を聞いたことがありません。
(実際、添付文書の副作用に「体重増加」の記載はない)

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ナウゼリン(ドンペリドン)は、ドパミンD2受容体を介してアセチルコリンの量を調整する吐き気止め薬で、吐き気、食欲不振、腹部膨満感、腹部不快感、胸焼けの症状に効果があります。

 

ドグマチール(スルピリド)は、抗うつ剤や統合失調症薬と併用されることが多いため、ドグマチール(スルピリド)以外の薬が原因で太るのかもしれません。

ドグマチール(スルピリド)で母乳(乳汁)が出る理由

ドパミンD2受容体をブロックすると、プロラクチンが増加することもわかっています。

黄体刺激ホルモンであるプロラクチンには、乳汁の分泌促進作用があります。

ドグマチール(スルピリド)には、出産後の女性の母乳分泌量を増加させる効果が期待できます。

母乳分泌量を増やすドグマチール(スルピリド)の飲み方

産科では、ドグマチール(スルピリド)のプロラクチン増加の副作用を逆手に取って、母乳分泌薬として使用される場合もあります。

 

ドグマチール1日100mgを5日間程度服用

ただ、母乳を出す目的でのドグマチール(スルピリド)の使用は、保険の効かない適応外使用(裏技)であるため、こうでなければならないという用法用量はありません。

母乳(乳汁)の出方によっては100mg以上ドグマチール(スルピリド)を使用することもありますが、

他のホルモン系の副作用の問題があるため、必要最低限の服用期間にとどめます。

ドグマチール(スルピリド)の副作用は用量依存的に増加します。
(先述:「ドグマチールの副作用」参照)

 

母乳分泌量を増やす目的で、ドグマチール(スルピリド)と同様にドパミンD2遮断作用のあるプリンペランを1日10~15mg使う場合もあります。

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プリンペラン(メトクロプラミド)は古典的な吐き気止めですが、幅広い吐き気(中枢性嘔吐・末梢性嘔吐)を抑える効果があります。

高プロラクチン血症

授乳中の場合は、ドグマチール(スルピリド)の副作用は主作用にもなりえます。

しかし、プロラクチンが増えすぎると、ホルモンバランスが崩れ生理不順の原因にもなります。

ドグマチール(スルピリド)の服用で、男性も突然胸から乳汁が出ることがあります。
(ウソではありません。私も男性の乳汁分泌の副作用を1例経験しました。その方曰く、乳汁がしみ出るようにでる)

 

ドパミンD2受容体をブロックしない胃薬

ガスモチン(モサプリド)の吐き気・胃もたれ・便秘改善効果と副作用(下痢)
ガスモチンは胃薬ですが、消化管全体に働きかけ腸にも効果がおよぶため、便秘がちの方に便秘薬の併用薬として使用される場合もあります。

まとめ

  1. ドグマチール(スルピリド)には、3つの顔がある(胃薬、抗うつ薬、統合失調症薬)
  2. 抗うつ剤で太る主な理由は、抗ヒスタミン作用(ヒスタミンをブロックする作用)が原因と考えられているが、ドグマチール(スルピリド)には抗ヒスタミン作用はない
  3. ドパミンD2受容体をブロックする胃薬には、プリンペランやナウゼリンがあるが、太る副作用はない
  4. ドグマチール(スルピリド)は、抗うつ剤や統合失調症薬と併用されることが多いため、太るのはドグマチール(スルピリド)以外の薬のウェイトをしめるのでは?
  5. 黄体刺激ホルモンであるプロラクチンには、乳汁の分泌促進作用がある
  6. 産科では、ドグマチール(スルピリド)の副作用(高プロラクチン血症)を逆手に取って、母乳(乳汁)を出しやすくする薬として使用される場合もある

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