咳には咳止めを、痰には去痰薬(きょたんやく)を、喉の痛みには解熱鎮痛剤を使います。
しかし、これらの薬は咳痰喉の痛みの症状を軽くするだけで、風邪の原因そのものに働きかける薬ではありません。
そこで活躍するのが抗生物質です。
抗生物質は多くの種類がありますが、クラリス・クラリシッド(クラリスロマイシン)、ジスロマックといったマクロライド系抗生物質は、喉から肺への働きかけが良好です。
そのため、咳痰喉の症状によく使われています。
しかしながら、クラリス・クラリシッド(クラリスロマイシン)は安易に使われ過ぎているという問題もあります。
クラリス・クラリシッドとは
クラリス・クラリシッドはクラリスロマイシンを主成分とするマクロライド系抗生物質です。
(以下、この2つの抗生物質をまとめてクラリスロマイシンと書きます)
抗生物質は下痢・腹痛などの胃腸系の副作用が起こりやすいですが、クラリスロマイシンはそれらの副作用頻度が低く、見かけ上は使いやすいという特徴があります。
しかしながら、クラリスロマイシンは飲み合わせに気を使う薬であり、安易に飲むべき薬ではありません。
『クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)は飲み合わせに気を付けよう!』
クラリスロマイシンの効果
クラリスロマイシンには大きく分けて2つの効果が期待できます。
- 風邪のような症状を起こす病気に対する効果(←本記事のメイン)
- ピロリ菌を除菌する効果
風邪のような症状を起こす病気への効果
クラリスロマイシンは、風邪のような症状に効果を発揮します。
– | 成人有効率(%) (効果) |
小児有効率(%) (効果) |
---|---|---|
咽頭・喉頭炎 | 75.8 | 93.1 |
扁桃炎 | 88.4 | 95.8 |
急性気管支炎 | 83.1 | 89.6 |
肺炎・肺膿瘍 | 88.4 | 94.9 |
中耳炎 | 66.0 | 88.7 |
副鼻腔炎 | 72.4 | 85.7 |
データの出典:クラリスの臨床効果
クラリスロマイシン、ジスロマックなどのマクロライド系抗生物質は、マイコプラズマ肺炎の特効薬としても知られています。
しかしながら、クラリスロマイシンが効かないマイコプラズマが増えつつあり、治療が進まないケースが増えつつあります。
くわしくは「クラリスロマイシンと耐性菌」で解説しています。
ピロリ菌の除菌効果
クラリスロマイシンは、胃潰瘍や胃がんの原因菌でもあるピロリ菌の除菌にも効果を発揮します。
ピロリ菌は3種類の薬(タケプロン、アモリン、クラリス)がワンパックになった除菌薬ランサップが有名です。
『ランサップで下痢(副作用)発生! ピロリ菌除菌に失敗する原因は?』
クラリスロマイシンは風邪に効かない
先の解説で、クラリスロマイシンは「風邪に効く」と書かずに「風邪のような症状に効く」と、お茶を濁したのには深い意味があります。
クラリスロマイシンは風邪に効かないからです。
ですので、クラリスロマイシンは普通の風邪には使わないのが基本です。
しかし、さまざまな事情からその基本が守られておらず、クラリスロマイシンは飲み過ぎ使い過ぎ状態です。
クラリスロマイシンは風邪に効かない理由
風邪はウイルス感染が原因であることがほとんどです。だから、クラリスロマイシンは風邪ウイルスには全く効きません。
なぜなら、クラリスロマイシンのターゲットは細菌だからです。
風邪ウイルスの種類 | 主な症状 |
---|---|
ライノウイルス | 鼻水・鼻づまり |
コロナウイルス | 喉 |
RSウイルス | 咳・痰 |
ロタウイルス ノロウイルス |
下痢・嘔吐 |
しかしながら、ウイルス感染で免疫が弱っているとき、ウイルス感染にプラスして細菌の感染も受けることがあります。(これを二次感染といいます)
クラリスロマイシンはそのような二次感染に効果があるのです。
風邪は鼻・咳・喉の症状から始まり、4.5日くらいで落ち着いてきます。
しかし、1週間くらい経っても咳痰喉の症状がよくならなかったり、全身症状にへ発展する場合は、二次感染を起こしているかもしれません。
『クラリスロマイシン(クラリス/クラリシッド)は風邪には効かない!』
クラリスロマイシンと耐性菌
クラリスロマイシンは飲んでいる間にある一定の割合で耐性菌(特定の抗生物質に効かない細菌)が表れます。
そして、クラリスロマイシンは効かなくなります。
本来、抗生物質が効かない風邪にクラリスロマイシンを使い続けたらどうなるでしょうか?(想像はつきますよね?)
クラリスロマイシンと耐性菌の問題は、2000年くらいから表面化してきています。
- クラリスロマイシンが効かない肺炎マイコプラズマが増え、マイコプラズマ肺炎の治療が思うように進まなくなりつつあります。
- クラリスロマイシン耐性のピロリ菌が多く存在したとき、ピロリ菌の除菌に失敗する場合があります。
『マイコプラズマ肺炎薬 抗生物質クラリス、ジスロマック、オゼックス』
最後に、咳痰喉の症状に効く薬を見ていきましょう。
クラリスロマイシンと併用薬
クラリスロマイシンは、咳痰喉の症状をやわらげる薬との併用が多いです。
症状 | 併用例 |
---|---|
総合感冒薬 | PL カフコデ |
発熱 喉の痛み |
ロキソニン カロナール |
咳 | メジコン フスコデ アスベリン ホクナリンテープ |
痰 | ムコダイン ムコソルバン |
※リンクをクリックすると、その薬の解説記事にジャンプします。
まとめ
- クラリス・クラリシッドはクラリスロマイシンを主成分とするマクロライド系抗生物質
- マクロライド系抗生物質は、咳痰や喉の痛み(風邪のような症状)によく効く
- クラリスロマイシンは風邪ウィルスそのものには全く効かない
- クラリスロマイシンは風邪薬ではない
- クラリスロマイシンは咳止め、去痰薬、解熱鎮痛剤との併用が多い
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