数十年前まではドライアイは「目が乾く病気」ととらえられていました。
そのため、乾燥を防ぐ目薬(マイティアやソフトサンティア)を注ぎ続ける治療法が主流でした。
しかし、マイティアやソフトサンティアを使っても、根本的なドライアイの治療にはなりませんでした。
ドライアイは目が乾くだけではなく、乾燥する原因があり、原因を解決できなかったからです。
現在、ドライアイは「さまざまな要因により涙液層(目の表面をおおう涙の膜)の安定性が低下する病気」ととらえられています。
涙液層を安定させる目薬はヒアレインが頻用されていますが、2010年にジクアス点眼液という涙液層をより安定させる目薬が開発され、それが主流になりつつあります。
ドライアイの症状
ドライアイは目の乾き以外に次のような症状を引き起こします。
- 目の疲れ・痛み
- 目のかすみ
- 目の違和感(ゴロゴロする)
ドライアイは悪化すると、頭痛、肩こりなど目以外の症状を起こす場合もあります。
ドライアイは生死に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を著しく低下させる病気です。
ドライアイの種類
ドライアイは大きく分けると2種類でしたが、最近では第3のドライアイが注目を集めています。
- 涙液減少型ドライアイ(涙の量の問題)
- 涙液蒸発亢進型ドライアイ(涙の質の問題)
- BUT短縮型ドライアイ(涙の層の問題)
1.涙液減少型ドライアイ
目が乾くと、まばたきをして涙で目をうるおわせ、乾燥を防ぎます。
しかし、涙液減少型ドライアイでは何らかの原因で涙が減り、目の乾燥を防ぐことができなくなっています。
2.涙液蒸発亢進型ドライアイ
涙(涙液層)は3層構造(油層、水層、ムチン層)で目の表面(角膜)の乾燥を防いでいます。
油層は水層(水分)の蒸発を防ぎます。
ムチンは水分が角膜となじませる働きがあります。
涙液蒸発亢進型ドライアイでは、油層の働きが悪くなり涙が蒸発しやすくなっています。
3.BUT短縮型ドライアイ
BUT(涙液層破壊時間)とは「涙の層ができあがってから破壊されるまでの時間」をいいます。
通常、まばたきをしてから涙は10秒以上目をうるおしますが、BUT短縮型ドライアイでは、まばたきをしてから涙の層が短時間で破壊されます。
つまり、涙が出ているにもかかわらず、目がうるおわないのです。
BUT短縮型ドライアイは、コンタクトレンズ(以下コンタクト)、パソコン、スマホを使う若い世代を中心に増えています。
ヒアレインは通常のドライアイ向け目薬
ドライアイ目薬は、マイティアや角膜をなめらかにするヒアレインが頻用されています。
しかし、マイティア、ヒアレインはBUT短縮型ドライアイにはあまり効果を発揮しません。
BUT短縮型ドライアイはムチンの働きの低下が主な原因で、マイティア、ヒアレインはムチンの分泌を高める効果はないからです。
粘液成分の一種です。
ムチンの分泌が減ると、涙の質が悪化して乾きやすい涙になるなど、ムチンは涙の安定性に重要な役割を果たしていることがわかってきています。
ジクアス点眼液はムチンの分泌を促して涙の量と質を改善する効果が期待されています。
ジクアス点眼液の作用機序
ジクアスはジクアホソルナトリウムを主成分とする新しい作用機序を持つドライアイ目薬です。
- 涙液分泌促進作用
涙の分泌をうながして目の乾燥を防ぎます。
(量の改善) - ムチン分泌促進作用
ムチンの分泌を促して、涙を角膜にとどめてたり、涙の安定性を改善します。
(質の改善) - 角膜上皮障害改善作用
角膜を滑らかにして目のバリア機能を改善します。
(ヒアレインも角膜上皮障害改善作用あり)
ジクアス点眼液の使い方
抗菌目薬は1日3回、アレルギー目薬は1日4回が多いですが、ドライアイ目薬はとにかく使う回数が多いです。
- マイティア:1日5~6回
- ヒアレイン:1日5~6回
- ムコスタ:1日4回
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ジクアス点眼液は1回1滴、1日6回使います。
使うタイミングは起床時、朝、昼、15:00、夕、就寝5分以上前でよいでしょう。
ジクアス点眼液はコンタクトしたままでOK
目薬は開封するまでは滅菌されていますが、開封後は少しずつ汚染されます。
汚染を抑えるために、目薬には防腐剤(塩化ベンザルコニウムなど)が添加されています。
防腐剤の主な成分
- 塩化ベンザルコニウム(BAK)
- ソルビン酸カリウム
- パラベン
- クロロブタノール
防腐剤を含む目薬はコンタクトを痛める原因になるため、コンタクトをしたまま使えません。
(ハードコンタクトはOK)
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ジクアス発売当時、防腐剤にベンザルコニウムを使っていたためコンタクトしたまま使えませんでした。
しかし、2015年に防腐剤ベンザルコニウムを除去し(BAKフリー化)、コンタクトしたままOKな目薬に進化しています。
<コンタクトしたままでOKな目薬の例>
- ジクアス
- ヒアレインミニ
- アレジオン
- インタールUD
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ジクアス点眼液の効果
ドライアイは目の乾燥以外に次のような症状を引き起こします。
- 目の疲れ・痛み
- かすみ(疲れ?)
- 異物感(特にコンタクト装着時)
ジクアス点眼液はこれらの症状を改善しますが、客観的データが公にされていません。
そこで、フルオレセイン染色スコアを効果の指標としたいと思います。
フルオレセイン染色液で角膜を染め、検査して角膜の状態をスコア化したものです。
フルオレセインを目に使うと、傷などが染まり角膜の状態を観察しやすくなります。
ジクアス使用4週間後のフルオレセイン染色スコア
(使用前0よりスコアが低い方が角膜の状態がよい→効果がある)
ジクアス点眼液とプラセボの効果比較
ジクアス点眼液とヒアレインの効果比較
ジクアス点眼液の副作用(しみる、痛い)
ジクアス点眼液を使ってみて多くの方が感じるのは刺激感(しみる)と眼痛(痛い)です。
ジクアス点眼液の副作用(承認時)
主な副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
眼刺激感(しみる) | 6.7% |
眼脂(めやに) | 4.7% |
結膜充血 | 3.7% |
眼痛(痛い) | 2.7% |
ジクアス点眼液は最初はしみます。特に目の状態がよくないほどしみるようです。
しかし、1カ月くらい使って目の状態がよくなってくると、しみなくなってくることが多いです。
次に、ジクアス点眼液を使い続けてると、ムニュムニュ~とした粘液(目脂)が目のふちについて気になりだします。
目脂がでてきたところあたりで、ジクアスが嫌になりやめる方もしますが、目脂はジクアスが効果が出てきた証拠とも言えます。
ネバネバした物質はムチンで、それが目のふちにあふれてきているからです。
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ジクアスとヒアレインの使う順番
順番の違いで効果に差がでるかは明らかにされていませんが、次のルールが一般化しています。
目薬の使う順番
- 医師から順番の指示がある場合は、その順番に使う
- 水性目薬→懸濁性目薬→油性目薬の順番に使う
- 目薬を点した後にゲル化する特殊な目薬や眼軟膏は、普通の目薬の後に使う
種類 | 目薬の例 |
---|---|
水性目薬 | ジクアス、ヒアレイン、アレジオン、パタノール (ほとんどの目薬) |
懸濁性目薬 | ムコスタ、リボスチン、フルメトロン |
ゲル化目薬 | リズモンTG |
懸濁性目薬は使う前に振る目薬です。
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ヒアレインは水性目薬ですが、ジクアス点眼液と比較すると粘性の高い目薬です。
そのため、ジクアス点眼液とヒアレインを併用する場合は、ジクアス→ヒアレインの順番に使います。
目薬は使用後5分~10分程度で角膜からなくなります(蒸発と吸収)。
そのため次のルールが点眼間隔では一般的です。
目薬の点眼間隔
- 水性目薬→懸濁性目薬→油性目薬の順番で使うとき、5分以上間隔をあける
- ゲル化する特殊な目薬や眼軟膏を使うときは、10分以上間隔をあける
ジクアス、ヒアレインの併用を総括すると、「ジクアスを使って5分以上経過してからヒアレインを使う」です。
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まとめ
- ドライアイはさまざまな要因により涙液層の安定性が低下する病気。
- ドライアイの主な症状は、乾燥、異物感、疲れ、かすみ。
- コンタクト・スマホ・パソコンを多用する若者世代に、BUT短縮型ドライアイ(第3のドライアイ)が広がっている。
- ジクアスはムチンの分泌を促して涙の量と質を改善する効果がある。
- ジクアスに似た目薬にムコスタ(目薬)がある。
- ジクアスは防腐剤クロルヘキシジンを除去し、コンタクトしたままOKな目薬に進化(2015年)。
- ジクアスの主な副作用は、刺激感(しみる)、目脂(めやに)、眼痛(痛い)。
- ジクアスにヒアレインの併用する場合、ジクアス→ヒアレインの順番に使う(間隔は5分以上あける)。
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