睡眠薬を飲んでも、次のような悩みを抱えている方は多いです。
- 眠れない、寝付きが悪い(入眠障害)
- 夜中に目が覚める(中途覚醒)
- 朝に早く目が覚める(早朝覚醒)
- 朝にぼんやりする(睡眠薬の持ち越し)
- 夜中(早朝)の同じ時間に目が覚める
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
睡眠薬は眠りの持続時間によって4種類に分類されています。
今、飲んでいる睡眠薬は、あなたの不眠症の症状に合わないタイプかもしれません。
この記事を読めば、あなたに合う睡眠薬を見つける手がかりがきっとあるはずです。
睡眠薬の持続時間(消失半減期)
睡眠薬の持続時間を決めるのは、主成分の消失半減期です。
消失半減期とは、主成分の血中濃度が半分になる時間のことです。
消失半減期が短い睡眠薬は速く体から排泄され、長い睡眠薬は体内に残ります。
つまり、消失半減期の短い睡眠薬は持続時間が短く(夜中に目が覚める)、消失半減期の長い睡眠薬は持続時間が長いということです。
最高血中濃度到達時間とは、薬を服用して主成分が血中で最大になる時間のこと。薬の睡眠効果の立ちあがりのスピードです。
消失半減期の5倍の時間が経過すると、血中にはほとんどの主成分が残っていません。
言いかえると、飲んでから消失半減期の5倍の時間が経過すると、薬の睡眠効果はほとんどありません。
4種類の睡眠薬と持続時間(消失半減期)
睡眠薬は持続時間(消失半減期)で4種類に分けられています。
- 超短時間型
- 短時間型
- 中時間型
- 長時間型
4種類の睡眠薬は、一般的には次のように使い分けます。
睡眠薬の種類 | 睡眠障害の種類 |
---|---|
超短時間型 ~短時間型 |
眠れない、寝付きが悪い (入眠障害) |
短時間型 ~中時間 |
夜中に目が覚める (中途覚醒) |
中時間 ~長時間型 |
朝に早く目が覚める (早朝覚醒) |
睡眠薬を飲んでも眠れない・目が覚めるパターン
眠れない、寝付きが悪い (入眠障害)
眠れない(寝付きが悪い)方が中・長時間型睡眠薬を服用すると、入眠障害は改善するかもしれません。
しかし、睡眠薬の持続時間が必要以上に長いため、朝にぼんやりする症状(睡眠薬の持ち越し)や眠気が日中に出てしまいます。
夜中に目が覚める(中途覚醒) 朝に早く目が覚める(早朝覚醒)
夜中に目が覚める方が超短時間型睡眠薬を服用しても、持続時間が短いため中途覚醒は改善されません。
睡眠効果がなくなったくらいの時間、夜中に目が覚めるのです。
睡眠薬のリスト
睡眠薬の種類 | 睡眠薬 | 主成分 |
---|---|---|
超短時間型 | アモバン | ゾピクロン |
ハルシオン | トリアゾラム | |
マイスリー | ゾルピデム | |
ルネスタ | エスゾピクロン | |
ロゼレム | ラメルテオン | |
短時間型 | エバミール | ロルメタゼパム |
ロラメット | ||
デパス | エチゾラム | |
リスミー | リルマザホン | |
レンドルミン | ブロチゾラム | |
中時間型 | ※エリミン | ニメタゼパム |
ロヒプノール | フルニトラゼパム | |
サイレース | ||
ユーロジン | エスタゾラム | |
ベンザリン | ニトラゼパム | |
ネルボン | ||
長時間型 | ダルメート | フルラゼパム |
ソメリン | ハロキサゾラム | |
ドラール | クアゼパム |
※エリミンは販売中止
※ロヒプノールは2018年8月に製造中止
睡眠薬の持続時間による違い
超短時間型睡眠薬はどれも同じくらいの効き目(睡眠効果発現時間、睡眠効果持続時間)なのでしょうか。
同じ超短時間型睡眠薬でも、効き目の違いがあります。
5種類の超短時間型睡眠薬は、どのように効き目が違うのかを考えてみましょう。
超短時間型睡眠薬の違い
睡眠効果が出るまでの時間
たいていの睡眠薬は放物線上に血中濃度(薬が血液中にある濃度)が推移します。
C-max:最高血中濃度
T-max:最高血中濃度到達時間
睡眠薬は最高血中濃度到達時間がおとずれる前(30分~60分くらい)に眠たくなりますが、最高血中濃度到達時間に0.75時間~1.2時間の違いがあります。
眠りの持続時間も結構違う
消失半減期を使って、それぞれの超短時間型睡眠薬の血中濃度をイメージするとこのような感じです。
※ロゼレムの代謝物(体内に入って変化したもの)にも睡眠効果があるため、実際の持続時間はもっと長いと考えられる
マイスリーとルネスタでは、かなり持続時間に差があります。
眠れない(寝付きが悪い)からマイスリーを飲んでいるが、夜中に目が覚めると言う方は、マイスリーからルネスタへの変更で、夜中に目が覚める頻度は低くなるかもしれません。
睡眠薬: 消失半減期の短い順
睡眠薬の種類 | 商品名 | 一般名 | Tmax | t1/2 | 持続時間の目安 |
---|---|---|---|---|---|
超短時間型 | ロゼレム | ラメルテオン | 0.75 | 0.94 | 3~6時間 |
マイスリー | ゾルピデム | 0.8 | 2.3 | ||
ハルシオン | トリアゾラム | 1.2 | 2.9 | ||
アモバン | ゾピクロン | 0.75 | 3.94 | ||
ルネスタ | エスゾピクロン | 1 | 5.08 | ||
短時間型 | デパス | エチゾラム | 3.3 | 6.3 | 6~12時間 |
レンドルミン | ブロチゾラム | 1.5 | 7 | ||
エバミール | ロルメタゼパム | 2.2 | 9.9 | ||
ロラメット | |||||
リスミー | リルマザホン | 3 | 10.5 | ||
中時間型 | ロヒプノール | フルニトラゼパム | 0.75 | 19.2 | 12時間以上 |
サイレース | |||||
ユーロジン | エスタゾラム | 5 | 24 | ||
ベンザリン | ニトラゼパム | 1.6 | 27.1 | ||
ネルボン | |||||
長時間型 | ドラール | クアゼパム | 3.4 | 36.6 | |
ダルメート | フルラゼパム | 1 | 未記載 | ||
ソメリン | ハロキサゾラム | 未記載 | 未記載 |
Tmax:最高血中濃度到達時間
t1/2:消失半減期
超短時間型睡眠薬の特徴
超短時間型睡眠薬の半減期は6時間以内で、睡眠効果は3時間~6時間程度持続すると考えられます。
超短時間型睡眠薬の主成分は、サッと効いてサッと体から抜けていきますので、眠れない(寝付きが悪い)方に最適です。
短時間型睡眠薬の特徴
短時間型睡眠薬の半減期は、超短時間型睡眠薬と比較すると倍ほどあり、睡眠効果は6時間~12時間程度持続すると考えられます。
短時間型睡眠薬の主成分は、朝まで体内に残ります。
そのため、中途覚醒にもある程度有効と考えられます。
短時間型睡眠薬は夜中に目が覚める方にも使えます。
中時間型睡眠薬と長時間型睡眠薬の特徴
中時間型睡眠薬と長時間型睡眠薬は消失半減期が相当長いため、なかなか体から主成分が消失しません。
中時間型睡眠薬と長時間型睡眠薬は、中途覚醒、早朝覚醒に適していますが、日中も抗不安作用が持続するため、不安感が強い不眠症状に使われる場合もあります。
ただし、筋弛緩作用(筋肉がゆるむ作用)も持続するため、夜中に目が覚めた時や日中のふらつき・転倒に注意が必要です。
中時間型睡眠薬と長時間型睡眠薬は、副作用を考えるとやや使いにくいです。
精神科専門医や睡眠剤に詳しい医師が使用することが多いです。
まとめ
不眠のタイプは主に3種類
- 眠れない、寝付きが悪い(入眠障害)
- 夜中に目が覚める(中途覚醒)
- 朝に早く目が覚める(早朝覚醒)
不眠のタイプに合わない場合、十分な効果は得られません。
まとめ
- 消失半減期とは、主成分の血中濃度が半分になる時間のこと
- 睡眠薬を飲んでから消失半減期の5倍の時間が経過すると、薬の効果はほとんどない
- 睡眠薬は効果の持続時間(消失半減期)で4種類
- 超短時間型睡眠薬は、眠れない(寝付きが悪い)方向け
- 短時間型睡眠薬は、眠れない方や夜中に目が覚める方(中途覚醒)向け
- 中時間型睡眠薬は、夜中に目が覚める方向け
- 長時間型睡眠薬は、専門医が使用することが多く、あまり使用されない
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