やけどによる細菌感染や感染皮膚の除去を目的に使われる特殊な塗り薬があります。
- ゲーベンクリーム
- ブロメライン軟膏
- イソジンシュガーパスタ
(メイスパン配合軟膏)
ゲーベンクリームはやけどによる滲出液が少ないとき、ブロメライン軟膏、イソジンシュガーパスタは滲出液が多いときに使う場合が多いです。
滲出液とは傷を再生する成分(傷を治す成分)を含み、やけど・擦り傷・切り傷を自然治癒力で治す重要な液体のことです。
ただ、ゲーベンクリームをやけどに使うと、痛い(傷口がしみる)ため、軽度のやけどには使うべきではありません。
低温やけどに注意!
ストーブなどの高温熱源に触れると、アチッとすぐにから手などを引っ込めます。
これが通常のやけどです。
一方、低温やけどは、普通ならやけどしないような低温熱源に長時間接触して起こるやけどです。
低温熱源はやけどしている感覚がほとんどないため、低温やけどに気付いたときには皮膚が赤くなったり、ただれたりしています。
ただれが、潰瘍レベルに達していると、治療にはけっこうな時間がかかります。
低温やけどを起こしやすい熱源
- カイロ
- 湯たんぽ
- ストーブの弱い熱
- ホットカーペット など
カイロには、「長時間使用しない」「直接肌に貼らない」などの注意書きがあります。
- カイロが直接肌に触れることを避け、下着の上から付けるかハンカチなどに包んで使うようにします。
- 「貼るタイプ」は、絶対肌に直接貼らないこと
- 肌の弱い方は低温やけどにご注意ください。
カイロ工業会「カイロを使用するときの注意」抜粋
ゲーベンクリームの成分
ゲーベンクリームはスルファジアジン銀を主成分とする臭いのある真っ白な塗り薬です。
スルファジアジン銀には抗菌効果は耐性菌ができにくいといわれており、抗生物質で耐性化した細菌にも効果があったという報告もあります。
ゲーベンクリームに皮膚を溶かす効果はない
ゲーベンクリームは「皮膚を溶かす塗り薬」と説明される場合がありますが、この説明は半分あたっていますが、半分はまちがっています。
その理由はこうです。
ゲーベンクリームの抗菌効果でやけどに付着した細菌が死滅し、やけどのまわりの皮膚が剥がれ落ちていきます。
その様子が、皮膚を溶かしているようにみえるだけで、ゲーベンクリームには直接皮膚を溶かす効果(壊死組織融解作用)はないからです。
ゲーベンクリームの効果は、あくまでやけどによる細菌感染の防止です。
疾患 | 有効率(効果) |
---|---|
中等度の熱傷 (やけど) |
75.6% |
高度の熱傷 (ひどいやけど) |
69.8% |
やけどの皮膚を溶かすとは
「皮膚を溶かす」
恐ろしく聞こえるかもしれませんが、やけど治療では普通に行われている医療行為です。
感染・壊死組織を外科的に除去したり、薬で溶解する(皮膚を溶かす)ことをデブリードマンといいます。
やけどで細菌が感染した壊死組織が正常な皮膚に影響を与えるため、やけど治療の妨げになります。ですので、何らかの方法で取り除かなくてはならないのです。
ゲーベンクリームは痛い(しみる)
ゲーベンクリームはやけどの傷口が隠れるくらいたんまり塗ります。
そのため、しみて痛いです。
(クリームはしみやすい)
重要な基本的注意
軽症熱傷に使用すると、疼痛がみられるので使用しない
ゲーベンクリーム添付文書より
主な副作用 | 副作用頻度 |
---|---|
疼痛(痛み) | 4.12% |
白血球減少 | 2.58% |
発疹 | 0.77% |
(再審査終了時)
ゲーベン軟膏があればいいのですが、残念ながらありません。
『塗り薬の軟膏とクリームの違いは基剤!吸収率、使用感で使い分ける』
もし、痛すぎてどうしようもないときは水でサラッと洗い流せます。
ゲーベンクリームはやけどに接触が必須
ゲーベンクリームが痛いのであれば、やけどにうっすら塗れば痛みはマシかもしれません。
しかし、ゲーベンクリームのスルファジアジン銀は、抗生物質(ゲンタシン軟膏など)のように皮膚から吸収されて効果を発揮する薬ではなく、菌との接触により直接抗菌効果を発揮する薬です。
そのため、そのような使い方をすると期待した効果が得られないでしょう。
『とびひを悪化させるな!ゲンタシン軟膏の効果的な使い方はこうだ!』
ゲーベンクリームを使う時期
中等度から重度のやけどはこのような過程を経てよくなっていきます。
- 黒色期(壊死組織除去期)
- 黄色期(感染制御期)
- 赤色期(肉芽(にくげ)形成期)
- 白色期(上皮形成期)
ゲーベンクリームは抗菌効果を期待して使うため、やけどの初期(黒色期~黄色期)に使います。
ゲーベンクリームは補水効果も期待できるため、滲出液がたっぷり出ているやけどの傷ではなく、滲出液の少ない傷に使います。
滲出液がたっぷり出ている軽いやけどにはキズパワーパッドが有効です。
『キズパワーパッドの仕組みがすごい!だから傷が早くキレイに治るのだ!』
ゲーベンクリームの使い方
やけどは「冷却しながら創部を洗浄する」という初期対応が大切です。
- 1日1回、やけどを覆うのに十分な厚さ(約2~3mm)のゲーベンクリームを塗る
- (医師から指示があれば)塗ったゲーベンクリームをガーゼや包帯などで軽く覆う
『 ドレニゾンテープは傷痕・ケロイド・あかぎれに効果抜群のステロイド!』
軽いやけどはキズパワーパッドで十分
医療現場ではやけど治療に湿潤療法(モイストヒーリング)が取り入れられています。
湿潤療法を自宅でも簡単にできるようにした新タイプの絆創膏が、キズパワーパッドです。
キズパワーパッドは、やけど・擦り傷・切り傷を早くきれいに治す効果があります。
『キズパワーパッドの4つの効果がステキすぎる!傷・やけどは もう怖くない!』
キズパワーパッドは使い方が特殊ですが、キズパワーパッドは貼り替えるタイミングの見極めさえできれば、貼ったら基本的には貼りっぱなしでOKで、使い方(貼り方、剥がし方)自体は簡単です。
『キズパワーパッドの使い方 はこう!傷・やけどはいつ治る?』
まとめ
- ゲーベンクリームは、スルファジアジン銀を主成分とする塗り薬
- ゲーベンクリームは、皮膚からで吸収されて効果を発揮する塗り薬ではない。
菌と薬の接触により抗菌効果を発揮する - ゲーベンクリームはやけどに塗るとけっこう痛い(副作用)
- 痛いのは皮膚が溶けているからではなく、ゲーベンクリームそのものが原因である
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