睡眠薬ベルソムラの7つの特徴 効かない・太る・悪夢は本当?

睡眠薬
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睡眠薬は大きく5種類に分類されています。

  1. バルビツール酸系
    (ほとんど使用されない)
  2. ベンゾジアゼピン系
    (ハルシオン、レンドルミン、他)
  3. 非ベンゾジアゼピン系
    (アモバン、マイスリー、ルネスタ)
  4. メラトニン受容体作動系
    (ロゼレム)
  5. オレキシン受容体拮抗系睡眠薬
    (ベルソムラ)

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は超短期間型から長期間型まで種類が豊富ですが、特有の副作用があります。

一方、新しいタイプの3種類の睡眠薬は強さは期待できませんが、副作用が少なく高齢者も使いやすいです。

  1. 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
    (アモバン、マイスリー、ルネスタ)
  2. メラトニン受容体作動系睡眠薬
    (ロゼレム)
  3. オレキシン受容体拮抗系睡眠薬
    (ベルソムラ)

 

「ベルソムラは効かない」「太る」などのうわさもありますが、メーカーが発表している資料をもとに、ベルソムラの効果、依存性、禁忌、悪夢の副作用を検証したいと思います。

ベルソムラと従来の睡眠薬との違い

ベルソムラは、従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)と比較して、次のような特徴が

  • 向精神薬ではない
  • 併用禁忌(飲み合わせ×)が意外と多い
  • 食事の影響を受ける
  • 依存性はない(といわれている)
  • 特異な副作用(悪夢)がある
  • 即効性は期待できない
    (「ベルソムラが効かない」とうわさされる原因のひとつ)
  • 睡眠作用の強さ(キレ)が劣る

ベルソムラは処方日数制限なし

ベルソムラの主成分はスボレキサントです。

ベルソムラ(スボレキサント)は向精神薬ではなく、習慣性医薬品というグループに属しています。

習慣性医薬品とは、薬事法で厚生労働大臣の指定した習慣性がある医薬品のことで、睡眠薬や抗不安薬などが該当します。

発表!麻薬、向精神薬、新薬の処方日数制限のすべて(GW/年末年始対応)

 

ベルソムラは、アレルギーの薬や糖尿病の薬のように、医師が必要と認めた場合は30日を超える処方ができます。

(2015年12月1日に新薬ベルソムラの14日処方日数制限が解除されました)

ベルソムラの作用の仕方

オレキシンは覚醒維持に関わるホルモンです。

オレキシンがオレキシン受容体に結合する前に、ベルソムラの主成分スボレキサントが、オレキシン受容体に結合します。

ベルソムラの作用機序

 

そうすることで、オレキシンが作用が弱まって覚醒力が下がり、眠気を誘うのです。

ベルソムラの使い方

ベルソムラは15mg20mg2種類(2016年12月に10mgが追加、3種類)の錠剤があります。

ベルソムラ10mg、ベルソムラ15mg、ベルソムラ20mg

左からベルソムラ10mg、15mg、20mg

 

1日1回就寝直前にベルソムラ20mgを服用する

これが標準的な使い方ですが、高齢者はベルソムラ15mgを使います。

ベルソムラは食事の影響を受けて睡眠効果が遅れることがあるため、夜食をとってはいけません。

ベルソムラの食事の影響を示す線グラフ

メーカー公表資料より作成(一部画像引用)
Tmax:最高血中濃度到達時間(薬が最も効く時間)

ベルソムラの併用禁忌 (飲み合わせ×)

ベルソムラは一緒に飲んではいけない薬(併用禁忌)が8成分存在します。これらの薬と併用した場合、ベルソムラの効果が増強されます。

禁忌の成分名 主な商品名 薬の種類
イトラコナゾール イトリゾール 抗真菌薬
ボリコナゾール ブイフェンド 抗真菌薬
クラリスロマイシン クラリス 抗生物質
クラリシッド
リトナビル ノービア 抗ウイルス化学療法剤
(HIV感染症)
※カレトラ配合錠
※ヴィキラックス配合錠 抗ウイルス化学療法剤
(C型慢性肝炎)
サキナビル インビラーゼ HIVプロテアーゼ阻害剤
(HIV感染症)
ネルフィナビル ビラセプト 抗ウイルス化学療法剤
(HIV感染症)
インジナビル クリキシバン 抗ウイルス化学療法剤
(HIV感染症)
テラプレビル テラプレビル 抗ウイルス剤
(C型慢性肝炎)

※添付文書の禁忌には記載がありませんが、リトナビルを含むため記載しました。

 

イトリゾール(水虫薬)、クラリス、クラリシッド(咳、痰など)は、よく使われる薬ですので併用に注意が必要です。

爪水虫(爪白癬)飲み薬 ラミシール VS イトリゾール 効果と副作用

クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)は飲み合わせに気を付けよう!

ベルソムラの依存性

ラットを使った依存性試験の結果では、依存性は認められなかったとありますが、ベルソムラは習慣性医薬品に指定されています。

習慣性とは依存性のことであり、ベルソムラにも何らかの依存性があるものと私は考えています。

ロゼレムは習慣性医薬品に指定されていない唯一の睡眠薬です。

睡眠薬ロゼレムの標的はメラトニン受容体!効果、副作用、禁忌

ベルソムラの悪夢

ベルソムラの市販直後調査(2015年7月発表)によると、ベルソムラの処方があった推定7.5万人に対して1427件の副作用が報告されています。

<ベルソムラの副作用報告抜粋>

副作用 副作用件数 副作用発現率
傾眠※ 201 14.1%
悪夢 148 10.4%
異常な夢 45 3.2%
頭痛 79 5.5%
めまい 50 3.5%

※傾睡(けいみん)とは、うとうとしている状態のことです。

 

ベルソムラは他の睡眠薬と比較して、異常な夢を含めて悪夢を見ることが多いです。

私が薬剤師として神経科を担当していたところ、悪夢の副作用による中止が数件ありました。

悪夢、異常な夢の副作用は、約80%の方がベルソムラを服用した初日に起こり、1週間程度で消失する場合が多いようです。

ベルソムラの中止により、悪夢、異常な夢の副作用はなくなったという報告もあります。

ベルソムラの副作用: 太る・痩せる?

2017年2月22日に放送された糖尿病と睡眠薬関連の影響でしょうか?
(「ガッテンとベルソムラ」参照)

ベルソムラで太るという情報が流れているようですが、ベルソムラで太る・痩せるという情報は今のところメーカーからは入ってきていません。

ドグマチール(スルピリド)で母乳(乳汁)が出る、太る副作用が起こる理由

ベルソムラとナルコレプシー、カタプレキシー

ナルコレプシー又はカタプレキシーのある方には、症状を悪化させるおそれがあるため慎重に投与する

ベルソムラの添付文書(医療者向けの薬の説明書)には、ナルコレプシー、カタプレキシーについての注意があります。

2015年7月に発表したベルソムラの市販直後調査では、ナルコレプシー、カタプレキシーとの関連報告はありませんでした。

ナルコレプシー
耐え難い眠気と居眠り発作。オキシトシン不足状態で発生することがある
カタレプシー
感情が高ぶったときなどに脱力する発作(情動脱落発作)

 

ベルソムラには、まだまだわからないこと(副作用など)が多くありそうです。

ベルソムラは効かない?

ベルソムラの効果1: 睡眠潜時の延長

ベルソムラはあまり即効性は期待できません。

飲み始めて2週間したくらいからじわじわ効いてきて、3カ月後安定した効果が期待できます。

ベルソムラを1年間服用したときの睡眠潜時(眠れるまでの時間)の推移

ベルソムラの効果1

ベルソムラインタビューフォームより作成

 

「ベルソムラは効かない」と判断する前に、悪夢などの副作用がなければ最低2週間は飲み続けてください。

ベルソムラの効果2: 睡眠時間の延長

ベルソムラは睡眠潜時と同様に、睡眠時間の延長(中途覚醒時間の短縮)効果も即効性が期待できません。

約2週間後から効果を示し、3カ月服用したころから安定した効果が期待できます。

1年間ベルソムラを服用した時の総睡眠時間の推移

ベルソムラインタビューフォームより作成

 

睡眠薬マイスリー VS ルネスタ VS アモバン 効果(強さ)と副作用の違い

ベルソムラの強さ

睡眠薬の強さは、一般的には次の順番です。

  1. バルビツール酸系
  2. レンドルミン、ハルシオンなど
    (ベンゾジアゼピン系)
  3. アモバン、マイスリー、ルネスタ
    (非ベンゾジアゼピン系)
  4. ベルソムラ(オレキシン受容体拮抗系)
  5. ロゼレム(メラトニン受容体刺激系)

 

「持続時間が長い睡眠薬」を強いという方がいますが、睡眠薬の持続時間と強さは無関係です。

睡眠薬の強さを決める要素は、睡眠薬の種類、主成分、服用用量などです。

【睡眠薬の種類】睡眠薬は効果(強さ)と副作用のバランスが大事

 

他の睡眠薬と比較すると、ベルソムラ、ロゼレムは強さの患者満足度は低いように感じます。

すぐに眠れて・夜中に目が覚めなくなる睡眠薬が望まれているようです。

眠れない?夜中に目が覚める?睡眠薬を見直そう【入眠障害と中途覚醒】

他の睡眠薬からベルソムラに変更

他の睡眠薬からベルソムラに変更した場合、悪夢もみるし、一時的に眠れない、効かないときもあります。

その理由は、先述のとおり悪夢はベルソムラ初日から1週間にかけて起こり、ベルソムラの効果が実感できるには約2週間の期間を要するからです。

「一時的に眠れない、効かない」を防ぐために、今まで服用していた睡眠薬を併用して少しずつ併用睡眠薬を減量、ベルソムラに変更していく方法を採用する場合が多いです。

ベルソムラへの変更イメージ

他の睡眠薬からベルソムラに変更

反跳性不眠と離脱症状を克服して睡眠薬を止める方法

ベンゾジアゼピン系睡眠薬と ルネスタ、ロゼレム、ベルソムラの比較(まとめ)

睡眠薬の服用で、悪夢などの変な夢をみることがありますが、ベルソムラは特にその頻度が高いようです。

ベルソムラの消失半減期は10時間程度ありますので、睡眠効果が持続するように見えます。

しかし、ベルソムラは今までの睡眠薬とは作用の仕方が違います。

ベルソムラの効果の持続時間は、超短時間型睡眠薬~短時間型睡眠薬くらいではないかと言われています。

従来の睡眠薬 ルネスタ ロゼレム ベルソムラ
分類 ベンゾジアゼピン系 非ベンゾジアゼピン系 メラトニン受容体作動薬 オレキシン受容体拮抗薬
ジェネリック
最大血中濃度到達時間 短~長 1時間 0.75時間 1.5時間
消失半減期 短~長 5.08時間 ※0.94時間 10時間
投与制限 30日~90日 なし
併用禁忌 無~有 ルボックス 8成分あり
デプロメール
特異な副作用 なし 苦み なし 悪夢
食事の影響 受ける薬も有 受けない 受ける 受ける
即効性 △~有
抗不安作用
筋弛緩作用 無~△ 無~△ 無~△
依存性
耐性
高齢者 非推奨 推奨 不明
(新薬のため)

ガッテンとベルソムラ

2017年2月22日に、糖尿病と睡眠薬関連「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎(NHKガッテン!)」の放送があってから、本記事へのアクセスが増大しました。

  • 臨床試験で確認されているベルソムラの効果は「不眠症」です
  • 血糖降下作用を期待して、糖尿病の方が睡眠薬を服用するのは間違いです
    (臨床的に効果が確認されている糖尿病の薬を飲むべきです)
  • ベルソムラは新しいタイプの睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬)です。
    そのため、不眠を克服するため以外の目的で服用する場合、確認されている副作用(悪夢、ふらつきなど)以外の副作用を起こす可能性があります

スルーしようと思いましたが、反響が大きいようですのでまとめておきます。

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