ゲンタシン軟膏は多くの皮膚病に使われています。
もちろん、とびひにも効果があります。
しかし、使い方がマズいと、耐性菌(特定の抗生物質に抵抗力を持った細菌)が増え、ゲンタシン軟膏を塗っても塗ってもちっとも効かず、とびひの悪化を止められなくなってしまいます。
今回は、次の2つのキーワードを意識しながら、ゲンタシンの効果的な使い方を解説します。
- とびひを悪化させない
- 耐性菌を増やさない
ゲンタシン軟膏とは
ゲンタシンには軟膏とクリームがありますが、とびひに使われるのは軟膏がほとんどです。
ゲンタシンは、ゲンタマイシンを主成分とするアミノグリコシド系抗生物質で、細菌を殺菌する効果があります。
次に、ゲンタシンがどのような細菌に効果があるのかを見てみましょう。
ゲンタマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属(肺炎球菌を除く)、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌
ゲンタシン軟膏添付文書より
このように、ゲンタシンは多く種類の細菌に効果があります。
とびひの原因菌はブドウ球菌群ですので、この細菌にどれだけ効果があるかも大切です。
ゲンタシン軟膏の使い方1 塗り方
ゲンタシン軟膏の添付文書には
「1日1~数回患部に塗布するか、あるいはガーゼなどにのばしたものを患部に貼付する」
と記載されています。
添付文書の「1日1~数回」はあいまいな表現ですが、多くの塗り薬がこのような状況です。
実際の現場では、ゲンタシン軟膏は次のような使い方をします。
「とびひは悪化すると広がる病気なので最初から広く塗る」という方もいますが、耐性菌の問題(「ゲンタシンの使い方3」で解説)からおすすめできません。
ガーゼを使った方がいいか?という質問もよく受けますが、医師の指示がない限りとびひにガーゼを使う必要はありません。
また、昔はとびひをイソジンなどで消毒していたそうですが、今は消毒はしません。
消毒をすると細胞が傷ついて治りが遅くなるからです。
消毒をしないで自然治癒力を引き出す新しい絆創膏がキズパワーパッドです。
『キズパワーパッドの仕組みがすごい!だから傷が早くキレイに治るのだ!』
<ゲンタシン軟膏の塗り方のポイント>
- とびひ患部を清潔に保つため、石鹸を十分に泡立てて洗う
(入浴後は必ずゲンタシンを使おう!) - 膿が多い場合は膿をタオルなどでぬぐう
(水ぶくれをつぶさないように!) - 手を石鹸で洗う
- 水ぶくれをつぶさないように、必要部分に適量塗る
(ゲンタシンはとびひに少しかぶせるだけで十分な効果を発揮します。ベタベタするまで塗る必要はありません)
ゲンタシン軟膏の使い方2 とびひが悪化してきたら
ゲンタシン軟膏をしっかりととびひに使っても、ゲンタシン軟膏の効果が不十分だと悪化します。
(ゲンタシン軟膏はすぐには効きません。使い始めて3日程度の観察は必要です)
そんなときは、もう一度受診して薬を追加もしくは変更してもらうべきです。
抗生物質(飲み薬)
セフゾン、フロモックス、メイアクトなど
抗生物質(塗り薬)
『ゲンタシンとアクアチムはとびひに効果あり!比較した意外な結果は?』
『とびひの塗り薬 抗生物質フシジンレオ軟膏 VS テラマイシン軟膏』
ステロイド・抗生物質配合剤(塗り薬)
『とびひにステロイド軟膏はOK?リンデロンVG、テラコートリルの違い』
また、とびひはかゆみが強い皮膚病です。掻いて悪化して全身に広がることもあります。
(爪で掻くと激しく悪化します。爪はしっかり切りましょう)
そんなときは、かゆみ・花粉症に効果のある抗ヒスタミン薬が有効です。
抗ヒスタミン薬はこちらを参照しよう。
『花粉症薬で眠くなるのは嫌!眠くならない抗アレルギー薬はこれだ!』
ゲンタシン軟膏の使い方3 いつまで使い続けるのか
ゲンタシン軟膏は、とびひがかさぶたになるまで使い続けます。
なぜなら、とびひが膿を持っていたり水ぶくれができた状態だと他の皮膚にうつしますが、かさぶたになればもう他の皮膚にうつすこともないからです。
それ以上は、ゲンタシン軟膏を使い続ける必要はありません。
使い続けると耐性菌をつくるからです。
耐性菌とは
耐性菌とは、特定の抗生物質に効かなくなった(抵抗力を持った)細菌のことです。
抗生物質は使っている間に一定の割合で耐性菌が増えます。
そして、あるときその抗生物質は効かなくなります。
ゲンタシン軟膏の効果と耐性菌
先に解説した通り、ゲンタシン軟膏は使い方がマズいと耐性菌を作ります。
診察のときに「3日くらいしたら、もう一度診察に来てください」と言われたことはないでしょうか。
その理由はとびひへの効果を確認するためです。
(ゲンタシン軟膏も使ってみないことには効果があるかわかりません)
効果がないのに続けると耐性菌ができます。必ず受診してください。
本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
ゲンタシン軟膏添付文書より
ゲンタシンにステロイドを加えたリンデロンVGもとびひに使われています。
『ゲンタシンとリンデロンVGの違い とびひにはこう使うのがパーフェクト』
まとめ
- ゲンタシンには軟膏とクリームがあるが、とびひに使われるのは軟膏が多い
- ゲンタシン軟膏は正しく使わないと、耐性菌が増えていつか効かなくなる
(だからゲンタシン軟膏の使い方は重要!) - 【とびひを悪化させないゲンタシン軟膏の使い方】
- 1日2回~3回、とびひの上に限定して使う
- 3日くらい使っても効かないときは、もう一度受診してみる
- とびひがかさぶたになったらゲンタシンは止める
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