授乳中に飲める薬・避ける薬(風邪、花粉症、インフルエンザ、喘息、うつ)

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授乳中に飲んだ薬の成分が母乳への移行することは間違いないです。

しかし、薬の母乳への移行経路と移行量を考慮して、薬と授乳の関係を再評価すると、授乳をやめずに飲める薬は意外と多いです。

授乳中と薬の評価基準のひとつにDr.Hale’s Lactation Risk Categories (授乳リスクカテゴリー)があります。

授乳リスクカテゴリー(抜粋)

授乳リスク 危険度 説明
L1 安全 児に有害な影響が増加したという報告がない薬
L2 比較的安全 児に有害な影響が増加するという報告のない薬
L3 おそらく安全 児に不都合な影響が出る可能性のある薬
L4 おそらく有害 児や乳汁産生にリスクがあるという明らかな証拠がある薬
L5 有害 児に対して重大で明らかなリスクがある薬

児:赤ちゃん

安心して母乳育児を続けられるように、授乳リスクカテゴリーを使いながら、母乳育児中に起こりやすい病気である、風邪、花粉症、インフルエンザ、産後うつ、喘息について解説します。

本記事では授乳リスクカテゴリーのわかる薬については【L1】などと記載します。

※授乳中に飲める薬とは、授乳中でも使いやすい薬という意味です。

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授乳中に薬を飲むとき・選択するときの工夫

こちらの記事を読んでいただくと、スムーズに本記事が読めます

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  1. 薬はできるだけ短期間、少量の服用を心がける
  2. 安全性が高いと考えられている薬を選択する
  3. 飲み薬より、塗布・吸入できる薬(外用薬)を選択する
  4. 小児薬がある薬を選択する
    (小児用ドライシロップ、小児用細粒、シロップがある薬)
  5. 1日1回タイプの飲み薬は、授乳直後(次回の授乳まで時間をとれる時間)に服用する
  6. できるだけ効果持続時間短い薬(消失半減期の短い薬)を使い、授乳直後に薬を服用する。
    (消失半減期の約5倍の時間が過ぎれば、血中に残っている有効成分は理論上3%程度)

薬の効果の持続時間(消失半減期)について

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授乳中は避けるべき薬の例

授乳中は避ける薬
偏頭痛薬エルゴタミン

偏頭痛で使用される薬にエルゴタミン製剤と呼ばれる薬があります。
エルゴタミン製剤は、母乳の分泌抑制作用と赤ちゃんへの有害作用があるため、授乳は避けます。

エルゴタミン製剤

  • ジヒデルゴット
    (ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩)
  • クリアミン配合錠【L4】
    (エルゴタミン酒石酸・他)

授乳中は避ける薬
レボドパ含有薬・ドパミン受容体作用薬
(パーキンソン治療薬)

パーキンソン病で使用されるレボドパ含有薬ドパミン受容体作用薬は、母乳の分泌抑制作用があります。

代替薬がない場合を除いて、レボドパ含有薬とドパミン受容体作用薬は、授乳中は避けます。

分類 授乳を避けるパーキンソン治療薬
レボドパ含有薬の例 ドパストン【L4】
ドパゾール
【L4】
ネオドパストン
メネシッド
マドパー
イーシー・ドパール
ネオドパゾール
スタレボ
ドパミン受容体作用薬の例 パーロデル【L5】
ペルマックス
カバサール
ドミン
ビ・シフロール
ペルマックス
レキップ
【L4】

授乳中は避ける薬の例(その他)

授乳中は避ける薬 有効成分 LRC 主な使用目的
リーマス 炭酸リチウム L4 躁(そう)状態の改善
サイレース フルニトラゼパム L4 不眠症
ロヒプノール 不眠症
ダルメート フルラゼパム L4 不眠症
コデインリン酸塩 コデインリン酸塩 L4
アンカロン アミオダロン L5 不整脈
ボンゾール ダナゾール L5 子宮内膜症

LRC:授乳リスクカテゴリー

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授乳と風邪薬

風邪薬は授乳中でも比較的使いやすいです。
たいていの場合は、風邪薬を飲みながら母乳育児を続けられます。

授乳中の解熱鎮痛剤

通常、風邪の熱、頭痛、喉の痛みの症状には解熱鎮痛剤を使います。

ほとんどの解熱鎮痛剤は母乳にわずかしか移行しませんので、授乳中であっても選択できる解熱鎮痛剤は多いです。

その中でも、最も安心して授乳中も服用できる解熱鎮痛剤は、やはりカロナールカルジールコカールなどのアセトアミノフェンを有効成分とする薬です。

市販の解熱鎮痛剤であれば、タイレノール(アセトアミノフェン)やイブA(イブプロフェン)などがいいです。

イブAにはカフェインが入っていますが、カフェインは母乳に移行する量は少なく、通常の服用(少量)であれば問題ありません。

ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)は乳児には使えないので、授乳中もダメなイメージがありそうです。

しかし、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)も、母乳への移行が非常に悪いです。
授乳中のお母さんに対して普通に使われます。

授乳中でも飲める風邪薬(解熱鎮痛剤)の例

解熱鎮痛剤 有効成分 LRC 小児 消失半減期
(時間)
カロナール
カルジール
コカール
アセトアミノフェン L1 2.36
セレコックス セレコキシブ L2 × 5~9
ブルフェン イブプロフェン L1 × 2
ボルタレン錠 ジクロフェナク L2 × ※1.2
ロキソニン ロキソプロフェン × 1.25

LRC:授乳リスクカテゴリー
小児:小児用薬の有無

※ボルタレン錠25mg(ボルタレンにはボルタレンSRカプセルもあります。ボルタレンSRは効果が持続するため、授乳中はボルタレン錠が適しています)

授乳中の抗アレルギー薬

風邪の鼻水、鼻閉(鼻づまり)症状などには抗アレルギー薬を使います。

詳細は、花粉症の項目に記載しています。

授乳中と抗生物質(抗菌剤)

多くの抗生物質は授乳中も服用できます。

抗生物質は風邪のウイルスをやっつける効果はありません。抗生物質は、細菌が感染で風邪が悪化するのを抑える目的で使用します。

赤ちゃん(子供)がテトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン【L3】、ビブラマイシンアクロマイシン)を服用したとき、歯の着色・骨の発育不全などの副作用が起こる可能性があります。

そのため、授乳中はテトラサイクリン系抗生物質を避けるのが望ましいです。

テトラサイクリン系抗生物質は赤く炎症をおこした赤ニキビの治療で使うことがあります。

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皮膚科でよく使われるニキビの抗生物質の飲み薬は、ミノマイシン、ビブラマイシン、ルリッドです。学会の推奨度もBランク以上で、効果もお墨付きです。

授乳中の方には、ペニシリン系抗生物質やセフェム系抗生物質が使われる傾向にあります。

小児に使えるニューキノロン系抗菌剤は、オゼックスだけです。

授乳中でも飲める抗生物質の例

抗生物質 有効成分 LRC 小児 消失半減期
(時間)
オゼックス トスフロキサシン 4.85
クラビット レボフロキサシン L2 × 7.89
クラリス
クラリシッド
クラリスロマイシン L1 4.04
ケフラール セファクロル L1 0.8
サワシリン
パセトシン
アモキシシリン L1 0.97
ジスロマック アジスロマイシン L2 ※61.9
セフゾン セフジニル L1 1.66
ダラシン クリンダマイシン L2 × 記載なし
タリビッド オフロキサシン L2 × 2.9
バナン セフポドキシルプロキセチル L2 3.6
メイアクトMS セフジトレンピボキシル L2 0.8

※ジスロマック錠250mg(ジスロマックにはカプセル・SR等があります)
LRC:授乳リスクカテゴリー
小児:小児用薬の有無

授乳中の風邪の咳・痰症状

コデインリン酸塩【L4】を含む咳止めは、新生児・乳児では呼吸抑制を起こすことがある。乳児でモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難など)が生じた。との報告があります。

そのため、授乳中はコデインリン酸塩【L4】を避けます。

コデインリン酸塩を含む咳止め
(授乳中は避ける薬)

  • コデインリン酸塩散1%「マルイシ」
  • コデインリン酸塩錠20mg「タケダ」
  • コデインリン酸塩散10%「第一三共」

など、「コデインリン酸塩~」で始まる薬。

授乳中でも飲める風邪薬(咳止め、痰切り)の例

咳止め
痰切り
有効成分 LRC 小児 消失半減期
(時間)
メジコン デキストロメトルファン L1 3.2
ムコダイン カルボシステイン 1.6
ムコソルバン アンブロキソール 記載なし
ビソルボン ブロムヘキシン 記載なし

LRC:授乳リスクカテゴリー
小児:小児用薬の有無

授乳と花粉症

年に1回のスギ花粉がやってくると非常に憂鬱な気分になります。授乳中であればなおさらです。

授乳中の花粉症でよく使われる薬は、抗アレルギー薬、点鼻薬、目薬、ステロイド内服薬です。

眠気などが出やすい抗アレルギー薬は、母乳育児の集中力低下や授乳中の赤ちゃんの落下の原因になります。

できれば、授乳中は眠くならないタイプの抗アレルギー薬を選択したいです。

【アレグラ、ザイザル、アレロック、アレジオン】副作用(眠気)の少ない花粉症薬はどれ?
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点鼻薬と目薬は、飲み薬と比較して母乳中への移行が少ないため、授乳中でも問題なく使用できます。
花粉症の症状がひどいときは、授乳中であってもステロイドの飲み薬が使われる場合もあります。

授乳中でも飲める花粉症の薬の例

  花粉症の薬 有効成分 LRC 小児 消失半減期
(時間)
飲み薬 アレグラ フェキソフェナジン L2 9.6
キプレス
シングレア
モンテルカスト L3 4.6
クラリチン ロラタジン L1 11.2
(食前)
14.3
(食後)
ザイザル レボセチリジン L2 7.3
ジルテック セチリジン L2 6.73
点鼻薬 フルナーゼ フルチカゾンプロピオン酸エステル
アラミスト フルチカゾンフランカルボン酸エステル
ナゾネックス モメタゾンフランカルボン酸エステル
目薬 アレジオン エピナスチン
クラビット レボフロキサシン L2
ザジテン ケトチフェン
タリビッド オフロキサシン L2
パタノール オロパタジン
フルメトロン フルオロメトロン
リボスチン レボカバスチン

△:小児適応あり
LRC:授乳リスクカテゴリー
小児:小児用薬の有無

眠気が起こらない花粉症の目薬と点鼻薬

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授乳とインフルエンザ

妊婦、授乳中、赤ちゃん インフルエンザ予防接種(ワクチン)NGは誰?
妊婦、授乳中、赤ちゃん。インフルエンザ予防接種をためらってしまう3タイプです。この中でインフルエンザワクチンを使えない人がいています。誰でしょうか?

CDC(疾病予防センタ-)は「母親が新型インフルエンザになっても、母乳育児を継続する」「抗インフルエンザ薬を飲んでも母乳育児を継続する」ことを推奨しています。

授乳ではインフルエンザは感染しませんが、お母さんがインフルエンザになってしまうと、お母さんと赤ちゃんの接触(咳など)で感染する可能性が高まります。

お母さんが、タミフルイナビルリレンザなどのインフルエンザ治療薬を使用していたとしても授乳は続けられます。

お母さんの咳がひどいとき、重症でつらいときなど、インフルエンザ感染リスクが高いと思う場合は、搾乳(さくにゅう)した母乳を哺乳瓶を使って健康な人に与えてもらうという手段もひとつです。

授乳と産後うつ(マタニティーブルー)

出産後の女性ホルモンの急激な変化と生活環境の変化などが原因で、気分が落ち込んでしまうことはよくあることです。

赤ちゃんが欲しくて今までがんばってきたのに、心の中にぽっかり穴が空いたような変な気分になります。

  • 理由もなく不安が押し寄せてくる
  • 涙が流れる焦りがひどくなる(落ち着かない)
  • 今まで楽しみだったことが楽しくない

出産前後は、人生の中で心の不調を起こしやすい時期のひとつです。

認知行動療法(気持ちを楽にする心理療法の一種)で、うつ・不安症状が取り除けないかチャレンジします。

それでも、うつ・不安症状が改善しない場合は、授乳中であっても薬を使って不安・うつ症状を改善します。

抗うつ薬などを服用しながら授乳する場合と、薬を飲まないでうつ・不安症状のまま生活を送る場合のリスクを比較すると、
薬を服用して母乳育児を続ける場合の方が、リスクは低いと考えられています。

うつ症状には、三環形抗うつ薬選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)の使用が多いです。

うつ状態が原因の不眠症状には、超短時間型睡眠薬が使われるときもあります。

眠れない?夜中に目が覚める?睡眠薬の種類を見直そう【入眠障害と中途覚醒】
睡眠薬の効果には「強い、弱い」がありますが、効果の持続時間が「長い、短い」もあります。睡眠薬は持続時間の長さで4種類に分類され、おもに3種類の不眠症タイプに使い分けられています。

授乳中は避ける睡眠薬の例

授乳中は避ける薬 有効成分 LRC
サイレース
ロヒプノール
フルニトラゼパム L4
ダルメート フルラゼパム L4

LRC:授乳リスクカテゴリー
小児:小児用薬の有無

授乳中でも飲める抗うつ薬、睡眠薬の例

分類 授乳中でも飲める薬 有効成分 LRC 小児 消失半減期
(時間)
抗うつ薬 トフラニール イミプラミン L2 9~20
アナフラニール クロミプラミン L2 21
パキシル パロキセチン L2 × 10
ジェイゾロフト セルトラリン L1 × 22~24
レクサプロ エスシタロプラム L2 × 24~28
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン L2 × 8~14
睡眠薬 ベンザリン
ネルボン
ニトラゼパム L2 × 27.1
アモバン ゾピクロン L2 × 3.94
ロゼレム ラメルテオン L3 × 0.94~1.14
ルネスタ エルゾピクロン L3 × 5.08

△:小児適応あり
LRC:授乳リスクカテゴリー
小児:小児用薬の有無

授乳と喘息

喘息は、悪化させると呼吸困難を起こす病気ですので、授乳中であっても治療を優先します。
喘息発作は、母乳育児の継続も困難にします。

喘息のコントロールの基本はステロイド吸入薬です。
授乳中でもほとんど問題となりません。

それでも喘息コントロールが不良なときは、気管支拡張吸入剤を発作時のみ吸入します。

授乳中でも使える喘息薬の例

分類 授乳中でも飲める薬 有効成分 LRC 小児
喘息予防 セレベント サルメテロール L2
アトロベント イプラトリピウム L2 ×
キュバール ベクロメタゾンプロピオン酸エステル L2
パルミコート ブデソニド L1
喘息発作時 サルタノール サルブタモール

△:小児適応あり

まとめ

今回は、風邪、花粉症、インフルエンザ、産後うつ、喘息の薬と授乳についてでした。

授乳中は、薬の処方をためらう医師や、薬を止めるようにいう薬剤師もいます。

しかし、記事を最後まで読んでいただいた方は、授乳中でも予想以上に多くの薬が飲めるとわかったと思います。

授乳と薬のまとめ

  1. 飲んだ薬の成分が母乳への移行することは間違いない
  2. 授乳を中断することなく服用できる薬は意外と多い
  3. 授乳中は避けるべき薬も、もちろんある