ゲンタシンとリンデロンVGの違いを簡単に説明すると、「ゲンタシンは抗生物質」で、「リンデロンVGは抗生物質+ステロイド」です。
とびひはブドウ球菌などの細菌感染が原因で起こります。
細菌感染は抗生物質が効くので、ゲンタシン、アクアチム、テラマイシン、フシジンレオなどを使います。
一方、ステロイドは細菌感染には使いません。
細菌が増えてとびひが悪化することがあるからです。
しかし、抗生物質とステロイドの配合剤(リンデロンVG、テラコートリル)は例外的に使われています。
ゲンタシンとリンデロンVGの違いダイジェストで解説した後、2つの塗り薬の効果的な使い分けを解説します。
ゲンタシン軟膏とは
ゲンタシンには軟膏とクリームがありますが、とびひに使われるのはゲンタシン軟膏がほとんどです。
ゲンタシンは、ゲンタマイシンを主成分とするアミノグリコシド系抗生物質で、細菌を殺菌する効果があります。
次に、ゲンタシンがどのような細菌に効果があるのかを見てみましょう。
ゲンタマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属(肺炎球菌を除く)、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌
ゲンタシン軟膏添付文書より
このように、ゲンタシンはブドウ球菌属はもちろん、多くの細菌に効果があります。
(「とびひ」に限定した効果のデータはありません)
表在性皮膚感染症とは、黄色ブドウ球菌などの細菌が傷などに侵入して炎症を起こす感染症の総称です。
例えば、カミソリ負け(毛瘡:もうそう)、毛のう炎、毛包炎、とびひ(伝染性膿痂疹)があります。
リンデロンVGとは
リンデロンVGは、リンデロンV(吉草酸ベタメタゾン:ステロイド)とゲンタシン(ゲンタマイシン:抗生物質)の配合剤です。
ステロイドには5段階の強さがあります。
リンデロンVG軟膏の強さは上から3番目のストロング(皮膚科ではストロングは標準的な強さ)です。
ステロイドの強さはこちらでも解説しています。
『軟膏の塗り方 いつ、何回、塗る量は?ステロイド軟膏を中心に解説』
リンデロンVG軟膏はかゆみの強い細菌性の湿疹(とびひなど)に特に効果がありますが、アトピー・虫刺されなどにもよく使われます。
リンデロンとよく比較される抗生物質とステロイドの配合剤にテラコートリルがあります。
その違いはこちらで解説しています。
『とびひにステロイド軟膏はOK?リンデロンVG、テラコートリルの違い』
また、リンデロンVGは軟膏/クリーム/ローションの3種類がありますが、とびひに使われるのはリンデロン軟膏がほとんどです。
(リンデロンはVG以外にも「V」「DP」「A」など多くの塗り薬があります。これらは全くのベツモノです)
リンデロンVGのとびひへの使い方
とびひはかゆみの強い皮膚病です。かゆみをとにかく抑える必要があります。
なぜなら、とびひのかゆみを放置しておくと、爪で掻いて傷が増えて悪化するからです。
リンデロンVGはかゆみの強いとびひに使います。
1日2回~3回、とびひが出ているところに限定して塗ります。
かゆみが強いようであれば、花粉症にも使われる抗ヒスタミン薬とステロイドの配合剤も有効です。
『セレスタミンの強さの秘密はステロイド!花粉症に効果抜群だが眠気に注意』
しかし、リンデロンVGはとびひを悪化させるリスクがあることを忘れてはいけません。
リンデロンVGのとびひ悪化リスク
リンデロンVGはステロイドを含むため免疫抑制作用があります。
免疫が弱くなると、細菌・ウイルスなどの感染を受けやすくなります。
(疲れると風邪をひきやすくなるのと同じ)
そのため、ステロイドはとびひ、水虫、ヘルペスなどの細菌・真菌・ウイルス感染症には使用しません。
しかし実際は、リンデロンVGはとびひ、ヘルペス、水虫などの腫れ、炎症、かゆみ、二次感染(ある細菌に感染してそれが治るまでに新たな細菌に感染すること)を抑えるための初期治療として使用されています。
リンデロンVGでとびひが悪化するくわしい理由はこちら!
『とびひがステロイドで悪化!こうすれば悪化せず済んだのに…』
ゲンタシンのとびひへの使い方 (リンデロンとゲンタシンの使い分け)
かゆみの少ないとびひにはゲンタシンで十分です。
かゆみの強いとびひも、かゆみがなくなったらリンデロンVGからゲンタシンへ変更するのがベターです。
なぜなら、リンデロンVGはとびひのかゆみを抑えるのが目的です。かゆみがなくなればゲンタシンでとびひ治療は続けられるからです。
ゲンタシンの使い方も、1日2回~3回、とびひが出ているところに限定して塗ります。
「とびひは悪化すると広がる病気なので最初から広く塗る」という方もいますが、耐性菌の問題からおすすめできません。
『ゲンタシンとアクアチムはとびひに効果あり!比較した意外な結果は?』
リンデロンVGとゲンタシンの耐性菌リスク
とびひは1回の診察で終わらない場合が多いです。
たいていもう一度診察に来るようにいわれます。
その理由は2つあります。
- とびひが悪化していないか確認するため
(ステロイドで細菌が増殖していないか) - とびひへの効果を確認するため
(抗生物質で耐性菌ができていないか)
耐性菌とは、特定の抗生物質に効かなくなった(抵抗力を持った)細菌のことです。
リンデロンVGやゲンタシンは、正しい使い方をしないと一定の割合で耐性菌が増えます。
そして、あるとき効かなくなります。
リンデロンVGとゲンタシンは知名度の高い塗り薬ですが、不適切な使い方が多い薬でもあります。
(リンデロンVGは特に)
抗生物質と耐性菌発生リスクはこちら!
『とびひを悪化させるな!ゲンタシン軟膏の効果的な使い方はこうだ!』
まとめ
リンクをクリックすると記事内の解説に戻ります。
- とびひは黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染が原因で起こる
そのため、抗生物質を含むリンデロンVGやゲンタシンが有効 - リンデロンVGはステロイドも含むため、とびひを悪化させるリスクがある
- リンデロンVGはかゆみの強いとびひに有効
- かゆみがなくなれば、リンデロンVGからゲンタシンへの切り替えが理にかなっている
コメント