アトピー塗り薬 プロトピック軟膏(タクロリムス)の効果と使い方

アトピー性皮膚炎の治療は、保湿剤をベースにステロイド軟膏を塗るという方法が主流でした。

しかし、ステロイドを長期使用すると、皮膚委縮や毛細血管拡張などの副作用が現れることがあります。

1999年、プロトピック軟膏が発売され、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢が増えました。

  1. 保湿剤(ヒルドイド、プロペトなど)
  2. ステロイド軟膏
  3. プロトピック軟膏

ステロイドを拒否している方も含めて、プロトピック軟膏は試す価値がある塗り薬です。

※アトピー性皮膚炎を「アトピー」と簡略表記します。

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目次

プロトピック軟膏の種類

プロトピック軟膏0.1% プロトピック0.03%小児用

プロトピック軟膏は2種類あります。

  1. 16歳以上が使用可能なプロトピック軟膏0.1%
  2. 2歳以上が使用可能なプロトピック軟膏0.03%小児用

どちらも1日最大塗布量は5g(チューブ1本)です。

プロトピック軟膏小児用は主に子供に使いますが、大人も使う場合があります。

  • 皮膚のうすい耳
  • 目のまわり
  • プロトピック軟膏を使うと、副作用が出る

プロトピック軟膏小児用は、濃度が薄いプロトピック軟膏です。

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プロトピック軟膏の成分

プロトピック軟膏は、免疫抑制作用のあるタクロリムスを有効成分とするかゆみ、炎症を抑えるアトピーの塗り薬です。

タクロリムスは、臓器移植時などの拒絶反応を抑える飲み薬(プログラフ、グラセプター)や、春季カタルのかゆみ・眼やにを抑える目薬(タリムス)に活用されています。

春季カタルとは
重症なアレルギー性結膜炎の一種で、猛烈な目のかゆみ、充血、痛みの症状がでます。
大人もなる場合がありますが、子供のほうが多いです。

アトピーで起こる免疫反応を抑える目的で、塗り薬として応用した薬がプロトピック軟膏です

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プロトピック軟膏(タクロリムス)妊婦禁忌

アトピー治療で欠かせないステロイド軟膏は妊婦も使えますが、プロトピック軟膏(タクロリムス)は、妊婦は使えません。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には使用しないこと。
(動物実験(ウサギ、経口投与)で催奇形作用、胎児毒性が認められたとの報告がある。)

プロトピック軟膏添付文書より

妊婦禁忌の塗り薬は、ディフェリンゲル、エピデュオゲル、プロスタンディン軟膏などがあります。

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正常肌とアトピー肌のバリア機能の違い

異物を体内に入れないように、皮膚にはバリア機能があります。

正常肌とアトピー肌の皮膚バリア機能の違い

正常肌:緑色矢印
アトピー肌:青色矢印

正常肌は、バリア機能が働いて異物を皮膚の表面でブロックします。

しかし、アトピー肌のバリア機能は正常より弱いため、異物の一部を肌に取り込み、かゆみや炎症などが起こします。

正常皮膚とアトピー皮膚のバリア機能の違い

プロトピック軟膏(タクロリムス)などの塗り薬も肌にとっては異物の一種ですので、皮膚にはバリア機能でブロックされてしまいます。

塗り薬は、いかに皮膚に浸透させるかがキーポイントです。

軟膏の皮膚吸収について

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プロトピック軟膏(タクロリムス)の皮膚への浸透

プロトピック軟膏(タクロリムス)は、正常の皮膚では吸収されにくく、アトピーの炎症を起こしている部分に集中的に効果を示すという特徴があります。

プロトピック軟膏の有効成分タクロリムスと、ステロイド(キンダベート)の有効成分の構造を見てください。

プロトピック有効成分の構造式

プロトピック有効成分の構造
(分子量822.0)

キンダベート有効成分の構造式

キンダベート有効成分の構造
(分子量478.98)

構造の複雑さ=分子サイズ(分子量)と考えてください。

タクロリムスの分子量は約800です。

ステロイド軟膏の成分と比較すると、かなり複雑で大きいことがわかります。

皮膚は分子量の小さい物質は通すが、大きい物質は通しにくい特徴があります。

  • 正常な皮膚へ浸透しやすい分子量の目安は、400から500くらいと考えられています。
  • バリア機能の低下したアトピー肌は、800から900程度まで通すことがあります。

プロトピック軟膏(タクロリムス)がアトピー肌に効果的に作用する秘密は分子量の違い(大きさの違い)です。

プロトピック軟膏(タクロリムス)とステロイドの効果の違い

プロトピック軟膏(タクロリムス)には、ステロイド軟膏にはない皮膚バリア改善効果があると言われています。

プロトピック軟膏(タクロリムス)を使って治したアトピー肌はきれいに治ることが期待できます。

ステロイド軟膏を継続して使用すると、毛細血管の拡張が皮膚の赤みとして残ることがあります。

顔や首は皮膚が薄いため、赤みが目立ちやすいです。

プロトピック軟膏(タクロリムス)はこのような症状は出ないため、顔や首によく使用され、体に使用するより効果が高いです。

プロトピック軟膏(タクロリムス)とステロイドの強さ

ステロイド軟膏は、ストロンゲストからウィークまで5段階の強さがあります。

  1. ストロンゲスト
  2. ベリーストロング
  3. ストロング
  4. マイルド(ミディアム)
  5. ウィーク

プロトピック軟膏(タクロリムス)の強さは、ステロイド軟膏のどのあたりになるのでしょうか?

プロトピック軟膏VSマイルドステロイド

顔と首にプロトピック軟膏とアルメタ軟膏(マイルドステロイド)に塗って、効果を比較したとき、

中等度以上の改善率(効果)は、明らかにプロトピック軟膏が優れていました。

  • プロトピック軟膏:97.3%、
  • アルメタ:70.0%

プロトピックとマイルドステロイドの効果の比較

データの出典:プロトピック軟膏第Ⅲ相臨床試験

プロトピック軟膏VSストロングステロイド

体と手足にプロトピック軟膏とリンデロンV軟膏(ストロングステロイド)に塗って、効果(強さ)を比較したとき、

中等度以上の改善率(効果)の優位差はありませんでした。

  • プロトピック軟膏:93.7%
  • アルメタ:90.5%

プロトピック軟膏とストロングステロイドの効果の比較

データの出典:プロトピック軟膏第Ⅲ相臨床試験

プロトピック軟膏とプロトピック軟膏小児用の強さは?

以上の試験結果から

  • プロトピック軟膏は、ステロイドのストロングクラスと同等の効果(強さ)
  • プロトピック軟膏0.03%小児用は、ステロイドのマイルド~ストロングクラスと同等の効果(強さ)と推測されています。

プロトピック軟膏、プロトピック軟膏小児用とステロイド外用薬の強さ

プロトピック軟膏(タクロリムス)のアトピーへの効果

顔と首へのプロトピック軟膏(タクロリムス)の効果

アトピーの方は、何らかの原因で急に症状が悪化する場合があります。

プロトピック軟膏(タクロリムス)は、顔や首には特に効果を発揮します。

3日から1週間程度で効果が現れ、アトピーのかゆみや炎症が少しずつ改善してきます。

体と手足へのプロトピック軟膏(タクロリムス)の効果

プロトピック軟膏(タクロリムス)は、顔首のアトピー薬のイメージがありますが、体や手足にも十分な効果を発揮します。

プロトピック軟膏とプロトピック軟膏小児用を、1日2回3週間体や手足に塗ったとき、効果は濃度依存的にプラセボを上回りました。

中等度以上の改善率(効果)

  • プラセボ:49.2%
  • プロトピック軟膏小児用:71.6%
  • プロトピック軟膏:91.9%

プラセボ、プロトピック軟膏、プロトピック軟膏小児用の効果の比較

データの出典:プロトピック軟膏第Ⅱ相臨床試験

プロトピック軟膏(タクロリムス)の使い方

強い炎症はステロイドで抑えてからプロトピック軟膏を使う

アトピーの炎症が強いときにプロトピック軟膏を塗ると、副作用が強く出る(後述)場合が多いです。

アトピーの炎症が強い時は、ステロイド軟膏で皮膚症状を安定させてからプロトピック軟膏を使うのが一般的な使い方です。

ステロイド軟膏とプロトピック軟膏の効果的な使い方(順番)

アトピーの炎症がひどい場合、ステロイドの飲み薬を使うこともあります。

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プロトピック軟膏(タクロリムス)の塗る回数

16歳以上の大人は、1日1~2回プロトピック軟膏(タクロリムス)をかゆみ、赤みがあるところへ塗ります。

2歳から15歳までの子供や大人は、1日1~2回プロトピック軟膏小児用をかゆみ、赤みがあるところへ塗ります。

アトピーの症状が出ている塗りはじめは1日2回からスタートして、効果が安定してきたら1日1回へステップダウンする使い方がスタンダードです。

塗り始めてから4週を超える頃から1日1回塗布の症例が増え、改善率も1日1回と1日2回でほとんど差は認められなかった

プロトピック軟膏インタビューフォーム

プロトピック軟膏(タクロリムス)の塗る量

プロトピック軟膏(タクロリムス)を、人差し指の第一関節から先まで絞り出した量は約0.25gです。

プロトピック軟膏(タクロリムス)の塗る量

プロトピック軟膏(タクロリムス)の塗る量の目安は、大人の手の平1枚分/0.25gです。

  塗布量の目安 指何本分
0.5g 2
0.5g 2
両腕 2.5g 10
両手 0.5g 2
胸腹背中 3.5g 14
おしり 1.25g 5
両足全体 5.5g 22

※1回あたりの塗布量は5g(1本)までが原則です。

ただ、プロトピック軟膏(タクロリムス)は、目安量の半分量でも十分に効果を発揮する印象があります。

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プロトピック軟膏(タクロリムス)の使ってはいけないところ

プロトピック軟膏(タクロリムス)は、次のようなところには塗ってはいけません。

  • 皮膚がじゅくじゅくしている部分
  • にきびや化膿している部分
  • 皮膚以外の部分(鼻の中など)

これらの部分にプロトピック軟膏(タクロリムス)を塗ってしまうと、痛みなどの刺激感が出たり、にきび・化膿が悪化する場合があります。

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もっと正しいプロトピック軟膏(タクロリムス)の使い方

プロトピック軟膏(タクロリムス)を止めたくなるとき

ステロイド軟膏やプロトピック軟膏(タクロリムス)の正しい使い方を実践すれば、表面上はアトピーがキレイになり、かゆみもなくなってきます。

ほとんどの方が、この瞬間にステロイド軟膏やプロトピック軟膏をやめてしまいます。

このときこそがアトピー治療で最も重要な時期なのです。

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見えない皮膚の奥ではアトピーの炎がくすぶっていて、完全に治りきっていないことが多いのです。

ここで塗り薬をやめてしまうと、消えかけた炎がじわりじわりと勢いを取り戻し、鎮火するためにまたプロトピック軟膏(タクロリムス)を塗るはめになります。

プロトピック軟膏の間違った使い方

プロトピック軟膏(タクロリムス)のプロアクティブ療法

アトピー治療では、症状が良くなってもすぐにプロトピック軟膏を中止してはいけません。

塗る回数と量を減量しながら、症状がなくても週に1~2回程、アトピー症状が出やすい場所に、プロトピック軟膏を継続して塗ります

この治療法をプロアクティブ療法と呼びます。

プロトピック軟膏の使い方(プロアクティブ療法)

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プロトピック軟膏の副作用

いいことばかりのプロトピック軟膏ですが、高頻度に起こる副作用があります。

個人差はありますが、

ほとんどの方に塗ったところが熱くなった感じがする(灼熱感)、ヒリヒリした火照った感じがする(刺激感)という副作用が出ます。

これらの副作用は、プロトピック軟膏を塗ってから10分後~1時間程度続くことが多いです。

プロトピック軟膏を塗った初日から起こり、1週間くらいで治まります。

副作用がひどくて中止になった例はあまり見たことがありませんが、副作用がひどい場合は医師と相談してください。

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プロトピック軟膏は、多くの方が次の様な独特の違和感(副作用:痛い、ほてり、ヒリヒリ)を感じます。塗り薬が効いてきている証拠ですが、副作用を軽減する対策も重要です。

まとめ

  1. プロトピック軟膏小児用は主に子供(2歳~15歳)に使うが、大人(16歳以上)も使う場合もある
  2. プロトピック軟膏は妊婦が使えない塗り薬
  3. プロトピック軟膏は、正常の皮膚では吸収されにくく、アトピーの炎症を起こしている部分に集中的に効果を示す
  4. プロトピック軟膏を使って治したアトピー肌はきれいに治る
  5. プロトピック軟膏は、ステロイドのストロングクラスと同等の効果(強さ)
  6. プロトピック軟膏小児用は、ステロイドのマイルド~ストロングクラスと同等の効果(強さ)
  7. アトピーの炎症が強い時は、ステロイド軟膏で皮膚症状を安定させてからプロトピック軟膏を使うのが一般的な使い方
  8. プロトピック軟膏の塗る量の目安は、0.25g/大人の手の平1枚分
  9. アトピー治療では、症状が良くなってもすぐにプロトピック軟膏を中止しない
  10. 塗る回数と量を減量しながら、症状がなくても週に1~2回程アトピー症状が出やすい場所に、プロトピック軟膏を継続して塗る(プロアクティブ療法)