皮膚科の混合軟膏メリット・デメリット 使用期限と保存のルールはある?

充填された軟膏

皮膚科を受診した方であれば、青や赤のフタのプラスチック容器に入った薬をもらったことがあると思います。

この容器には1種類の薬が入っていることは少なく、ほとんどの場合が2種類以上の軟膏やクリームを混合した薬が入っています。

この混合軟膏には、使用期限と保存のルールは存在するのでしょうか?
飲み薬と保存方法は違うのでしょうか?

軟膏を混合するメリットとデメリットも合わせて解説します。

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軟膏の混合方法(軟膏の混ぜ方)【動画】

軟膏混合機を使えば、薬剤師の混合技術の差がでないため、毎回一定水準の混合薬ができます。

しかし、軟膏混合機はハイコストのため、実際は薬剤師が軟膏べらと軟膏台を使って混合しているところがほとんどです。

  1. すべての器具と容器、薬剤師の手をエタノール等で消毒する
  2. 軟膏剤を絞り出す(または計る)
  3. 軟膏を少しずつ混合する
  4. 均一に混合されているのを確認する
  5. 軟膏つぼの壁に擦りつけるように(押しつけるように)詰める
  6. タッピングをして空気を抜く
  7. 表面を滑らかにする
  8. ティッシュ等で横についた軟膏をふき取り、消毒する

動画を見ていただいた方へ
軟膏の混合は、結構地味な作業だと思いましたか?

次に軟膏を混合するメリット・デメリットを見ていきましょう。

一包化の動画

【調剤報酬(薬代)】一包化加算、内服薬、外用薬の調剤料の計算
薬代(調剤報酬)はどこの薬局でもらっても同じ値段ではありません。薬局の薬代には、調剤するときや、患者さまに薬の説明するときに技術料や指導料がかかるためです。【一包化動画有】

軟膏を混合するメリット

軟膏を塗る手間の軽減(メリット1)

女子がチェック

何回も塗る手間を省き、できるだけ正しい回数を塗れるように、軟膏は混合されます

これがメリットの1つ目です。

アトピー性皮膚炎などでは、毎日1日2回以上、塗り薬を塗る場所によって薬を使い分けなくてはなりません。

例えば、ヒルドイドソフト軟膏を全身に塗って、マイザー軟膏を体に塗る。プロトピック軟膏を顔に塗るといった感じです。

保湿剤ヒルドイドの効果を最大にする使い方(塗り方、順番、量)と副作用
ヒルドイドは、ネットではアンチエイジングクリームとして紹介されています。ヒルドイドは保湿効果に優れますが、塗り方、量、回数を守ることで最大の効果を発揮します。

全身に軟膏を塗る場合は、1回の塗布ですら非常に時間がかかります。
それを毎日数回行うと思えば、たいへんなことです。

1日2回塗布するように医師から指示があった場合でも、1週間経てば、1日1回しか塗布しなくなることも十分に考えられます。

皮膚への浸透率を上げる効果(メリット2)

アトピー薬プロトピック軟膏の効果、副作用と使い方をステロイドと比較 プロアクティブ療法とは?
プロトピック軟膏(タクロリムス)とステロイド軟膏を用いた新しいタイプの治療法「プロアクティブ療法」が広まってきています。プロアクティブ療法は、再発を防ぎ、良好な状態を保つ治療法の一種です。

デルモベート軟膏0.05%とプロペト(白色ワセリン)を1:1で混合したとしましょう。

デルモベート軟膏は半分の濃度の0.025%に理論上なりますので、効果も半分になるはずです。

実際は、デルモベート軟膏0.05%とプロペト(白色ワセリン)を1:1で混合軟膏は、デルモベート軟膏単独の半分の効果ではありません。

もし、単純に軟膏を混合することで効果が100%→50%→25%となるのであれば、
ストロンゲストのステロイド軟膏ににプロペトを混合することで、自家製ベリーストロング混合軟膏、自家製ストロング混合軟膏を作ることができます。

それが可能であれば、メーカーがストロンゲストからウィークの強さのステロイド軟膏を発売する理由がなくなります。

軟膏はプロペトで薄めれば、薄くなり、効果もそれに応じて減弱するほど単純なものではありません。

ステロイド軟膏のランクと基剤について

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使用感、効果、吸収率、吸収速度を決める要素のひとつが基剤です。塗り薬の治療においては、有効成分と同じくらい基剤の選択がキーポイントになります。軟膏とクリームのどちらがよく効くのでしょうか?

相乗効果のある混合軟膏の処方例(ステロイドと保湿剤の混合)

ステロイド外用剤にケラチナミンとヒルドイドソフトをそれぞれ混合したときの浸透率の変化を示す図

出典:ノバルティスファーマHP

*2015年現在、ケラチナミン軟膏はケラチナミンクリームに名称変更されています
*ケラチナミンクリームは水溶性ベース基剤(O/W型)を使っていますので、軟膏とは混ざりません

軟膏の混合を一般化できるものではありませんが、
ステロイド軟膏に、ヒルドイドソフト軟膏、ケラチナミンクリーム、パスタロンソフト軟膏のような脂溶性ベース基剤(W/O型)で作られた保湿剤を混ぜることで、皮膚への浸透力が上がることが知られています

これが混合する2つ目のメリットです。

ヒルドイドソフト軟膏
パスタロンソフト軟膏
軟膏と名前が付いていますが、実は乳化剤を使った油脂性成分をベースとしたW/O型クリームです。クリームは軟膏に比べて、一般的に皮膚への浸透性が高いと言われています

O/W型クリームとW/O型クリームについて

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軟膏を混合するデメリット

混合による相乗効果が不明確(デメリット1)

男子がノーと手でしている

薬の効果は、薬自体の強さ、皮膚の状態、塗る量、塗る回数などによって決まります。混合することで、効果を変化させる要素がひとつ増えます

混合する2つ目のメリットで示した通り、ステロイドに保湿剤を混合することで、皮膚への浸透性が上がることがわかりました。

しかし、混合による軟膏の効果の増減データがあるわけではないため、混合による相乗効果は経験則でしかないのです。

混合軟膏の汚染(デメリット2)

メーカーが開発したチューブ軟膏は、理想的な保存状態です。

チューブから軟膏を外へ出すことで汚染が始まります。

軟膏容器に詰めた軟膏を、清潔ではない指で触ることで、さらに汚染は進みます。軟膏壺のフタのまわりも汚れやすいので、使用後はしっかりティッシュで拭き取るなどして保存して下さい。

使い終わった混合軟膏容器を持参し、「ここへ入れてください」と言われる方がいます。

「もったいない」と言う気持ちなのだと思いますが、汚染と保存のことを考えるとすると、お応えするのは難しいです。

お気持ちだけいただきます。

混合軟膏の保存の方法、使用の仕方は千差万別で、混合軟膏の汚染について調べた信頼できるデータも見当たりません。

混合軟膏の汚染については、だれもわからないのです。

汚染された軟膏を塗ることで、細菌感染・症状悪化等を起こす可能性があります。

飲み薬と同様に軟膏も使い方が肝心

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混合軟膏の使用期限(有効期限)がわからない(デメリット3)

軟膏チューブの下等に書かれている使用期限は、室温(薬によっては冷蔵庫)で保存して開封するまでの使用期限です

一度開封すると、使用期限までは使用は難しいと考えるのが一般的な考え方です。

開封した軟膏の保存状態は人それぞれで、いつまでが使用期限か明確には決められないからです。(たまに軟膏の開封後の使用期限が1カ月、3カ月…といわれる場合もありますが、経験則に基づくもので、根拠はありません)

さらに、混合してした場合、2つの観点から使用期限を考える必要があります。

  1. 混合軟膏の効果と配合変化(保存)
  2. 混合軟膏の清潔さ(汚染)

混合軟膏の効果と配合変化(保存)

軟膏・クリーム配合変化ハンドブックの第2版がついに出ました。

このような、便利な本がありますので、混合後の配合変化(保存)調べることは可能です。皮膚科の混合軟膏の処方箋を受ける薬局は、たいてい常備しています。

これがないと、混合軟膏についての保存を語れません。それだけ内容の濃い本です。

軟膏、クリームの混合の配合変化を、強引に一般化すると、このようなイメージです。

  軟膏 クリーム
(W/O)
クリーム
(O/W)
軟膏 ×
クリーム
(W/O)
×
クリーム
(O/W)
× ×

○:安定
△:分離する場合がある
×:混ざらない

自己負担が増える(デメリット4)

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軟膏を混合することを計量混合といいます。

2種類以上の塗り薬を混合することで、80点(3割負担で240円)の加算料が発生します。

混合軟膏の保存方法

混合軟膏の保存は部屋?冷蔵庫?

チューブの軟膏は、ほとんどが室温(1℃~30℃)保存ですので、混合軟膏も基本的には涼しい部屋での保存で問題ないと思います。

ただし、「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック(第1版)」によると、
「室温(部屋保存)× 冷所(冷蔵庫保存)○」
という混合軟膏も少数存在します。

「室温×冷所○」の薬を「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック(第1版)」から引用すると

  • マイザーとザーネの混合
  • アズノールとザーネの混合
  • アルメタとザーネの混合

混合軟膏のブリーディング

夏場の部屋での保存で、混合軟膏がブリーディング(水と油が分離した状態)を起こす場合があります。

分離された水は汚染されやすいため、ブリーディングが起こった場合は、すぐに冷蔵庫保存に切り替えてください。

夏場は室温以上に部屋の温度があがります。ブリーディング防止のためには、冷蔵庫(5℃くらい)の保存がいいのかもしれません。

まとめ

処方された薬が、使用されなければ治療になりません。手間を省き、できるだけ正しい回数を塗るために、軟膏は混合します。

混合軟膏は汚染しないように、使用前は手を洗って、フタ等に薬をつけたままの状態で保存しないようにして下さい。

軟膏を混合するメリット

  1. 塗る手間の軽減
  2. 混合軟膏同士の相乗効果

軟膏を混合するデメリット

  1. 相乗効果が不明確
  2. 軟膏の汚染と配合変化
  3. 使用期限(有効期限)がわからない
  4. 自己負担が増える